「灯台下暗し」の意味
「灯台下暗し」は、遠くの事には気づいても、身近なことはかえってわからず、気づかずにいる、という意味です。灯台は周囲を明るく照らしますが、すぐ下は影になっていて暗いものです。そこで、身近な事情に案外気がつかないでいることの例えとして使われています。
表記としては「灯台もと暗し」とひらがなの場合もありますが、「灯台元暗し」と「元」を使った漢字表記はしないので、注意してくださいね。
「灯台下暗し」の使い方
- 会社のすぐ近くにこんなに静かで桜がきれいな公園があったなんて、灯台下暗しだった。
- どこで買えるのかと思っていた岩塩だが、灯台下暗しでうちの隣のコンビニで売られていた。
- 灯台下暗しという言葉の通り、なかなか捕まらなかった犯人がまさか社内にいたなんて、ショックで言葉がみつからない。
どれも、自分の身近にあったことに全然気づかず、思いがけなかった例えとして使われていますね。
「灯台下暗し」の灯台の語源
「灯台下暗し」の「灯台」の語源は室内の照明だと言われています。その語源について詳しく見てみましょう。
灯火を載せた台
「灯台下暗し」における「とうだい」の語源は、灯明+台=灯明台です。灯明台とは、昔の室内用の照明器具の事です。脚の付いた台の上に油皿を置き、菜種油などを燃やして明かりとしたものです。灯火で周囲は明るくなるのですが、皿があるため灯台の足もとはその影により暗くなります。
1651年に刊行された俳諧『昆山集』には、以下のような句があります。
この句の中に「本」という言葉があることから分かるように、灯台とは本を読むための明かり、すなわち室内の明かりだったことが分かります。また、1808年の古いことわざ集『諺画集』でも、「灯台下暗し」の項目で、明かりの下で寝転がって本を読む人の図が紹介されています。
こうした灯台は江戸時代には多く使用されていましたが、現代では時代劇の小道具としてくらいしか見る機会がなくなり、「灯台下暗し」は実感しにくいものとなりました。
船の安全な航路を守る灯台
現代では灯台というと、岬や港などに立つ航路標識を思い出される方が多いのではないでしょうか。実際、かるた絵の「灯台下暗し」の図柄を見てみると、江戸時代後期は室内の明かりとしての灯台が描かれていますが、明治以降は岬に立つ灯台の図柄が採用されています。
また戦後に発行されたいろはかるたはすべて岬の灯台を描いたものになっています。「灯台下暗し」の灯台を岬の灯台と捉えるのは誤解であるとする説もありますが、岬の灯台も遠方を照らすため真下は暗いので、単なる誤解ではなく、現代風な解釈と言えるかもしれませんね。
「灯台下暗し」の類語
- 足下の鳥は逃げる
- 家の中の盗人は捕まらぬ
- 提灯持ち足下暗し
- 目でまつ毛は見えぬ
どれも同じような意味を持つことわざです。また四字熟語では、「傍目八目(おかめはちもく)」も似たような意味があります。これは、当事者よりも直接利害関係のない第三者の方が物事を正確に判断できる、という意味です。特に物の損得や得失などについてを判断する場合に使われます。
「灯台下暗し」の英語表現
- The darkest place is under the candlestick.(最も暗い場所はろうそく立ての下だ)
これはまさに「灯台下暗し」と同じ例えで表現されています。
- You must go into the country to hear what news at London.(ロンドンで何が起こったかを聞きに田舎へ行かなければならない)
- The nearer the church, the farther from God.(教会に近ければ近いほど、それだけ神から遠い)