「神出鬼没」の意味
「神出鬼没」の意味は、「鬼神(きじん・きしん)のように自由自在に出没して、居所が容易に分からないこと。どこでも好きなところに現れて、目的を達するとたちまち消えてしまうこと」です。
同じ意味で一文字違いの「神出鬼行(しんしゅつきこう)」という言葉も存在します。使われる頻度は「神出鬼没」のほうが圧倒的ですが、「神出鬼行」という言葉を見て「書き間違いだ!」と早とちりしないよう、こちらも覚えておくとよいでしょう。また、「神出」を同じ読みの「進出」と間違えないように気を付けましょう。
鬼神とは?
では、鬼神とは何でしょう?ルーツは中国の古い時代にあり、幅広い意味を持ちますが、「神出鬼没」においては「荒々しい神、強く恐ろしい神」を指しています。
唐代の文人・杜甫は、李白のことをこう讃えました。
(李白は)詩によって怖い鬼神をも深く感動させてしまうと言うのですが、この泣かされた「鬼神」こそ、「神出鬼没」で指している「鬼神」でしょう。つまり、神と言っても宗教的な意味合いはなく、鬼も日本人が一般的にイメージする鬼(角があって、牙があって…)と少し異なっているようです。神・鬼というより「精霊」と言ったほうが近いのかもしれません。
「神出鬼没」の用例
辞書の用例を見ると、必ずと言ってよいほど「神出鬼没の怪盗」とあります。「窃盗犯」や「凶悪犯」ではなく、正体不明で存在が怪しげな「怪盗」こそ「神出鬼没」らしさを感じさせるようです。
架空の世界では
- (ゲームで)IdentityVでは、プレーヤーに神出鬼没という補助特質があって、近距離の瞬間移動が可能になるんだ。
- (アニメから)『名探偵コナン』の神出鬼没キャラといえば、怪盗キッドでしょう。
現実の世界では
- 導入された移動式の速度違反取り締まり装置は、神出鬼没なため、ドライバーはより注意が必要になる。
- 淡水に生息するマミズクラゲは、その生態が詳しく分かっておらず、神出鬼没と言われている。
- 今日の関東地方は大気の状態が不安定なため、神出鬼没の雷雲に警戒が必要だ。
「神出鬼没」の由来
ルーツは紀元前、中国で書かれた『淮南子(えなんじ)』という書物までさかのぼることができます。全21編あるうちの「兵略訓」に、以下のような記述があります。
本来は優れた兵(軍隊)の行動についての表現(ここでは「神出鬼行」となっています)で、あまりに迅速でとらえようがないということを表した言葉でした。表現の対象が時代によって変化してきたとはいえ、2000年以上も昔に使われていた言葉が、大きく意味を変えることなく現代も生きています。
「神出鬼没」の類語
- 四文字熟語では
神出鬼行
鬼出電入(きしゅつでんにゅう)
神変出没(しんぺんしゅつぼつ)
出没自在(しゅつぼつじざい)
- 現代語として
ゲリラ 戦・的・豪雨・ライブ・アートと続けます。
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「神出鬼没」を英語で
- elusive 「an elusive criminal」で神出鬼没の犯人という意味になります。ただ、本来は巧みに逃げるという意味なので、突然姿を現すという要素が足りない気がします。
- It's not easy to spot his whereabouts because he seems to be everywhere. 直訳すると、彼はどこにでも姿を現すのだから、居場所を見つけるのは困難だ。意味的にはその通りなのですが、やや冗長なところが難点です。
- appear in unexpected places 直訳すると、予期せぬところに現れる。いつに間にかいなくなるというニュアンスには欠けているでしょうか。
- be of preternatural agility 直訳すると、超自然的な敏捷さを持つ。「鬼神」のイメージを重視すると、非常に近い表現のような気がします。