「憚る」とは?意味や使い方をご紹介

「憚る」は「はばか・る」と読みます。ことわざ「憎まれっ子世に憚る」はご存じの方も多いでしょう。では「憚り様」の意味はご存じですか?また、「憚り」はある場所を指すのですが、それはどこかおわかりになりますか? 今回は「憚る」の意味や使い方を詳しく解説いたします。

目次

  1. 「憚る」とは
  2. 定型句「憚りながら」
  3. 「憎まれっ子世に憚る」
  4. 名詞「憚り」の意味
  5. 「憚り様」とは
  6. まとめ

「憚る」とは

「憚る(はばか・る)」の「憚」という漢字は、左が「忄(りっしんべん)」で心を表し、右は「單(たん・ぜん・ひとえ)」で構成されています。「單」は旧字で、現在は「単」と書きます。「単」には「ひとつ」「ひとつのまとまり」「ひとえの着物」などの意味があります。

では、続いて「憚る」という動詞の意味をご紹介しましょう。

「憚る」の意味(1)

「憚る」には、大きく分けてふた通りの意味があります。1つ目は次のような意味です。
 

①差し障りがあるため敬遠・遠慮・気兼ねする。
②恐れ慎む。
③障害があって進むことをためらう。

これらはどれも、対象となる人物や、そこに生じる事態を恐(畏)れて、こちらの言動を控えるというニュアンスを持っています。

この場合の用法としては以下のようなものがあります。
  • 人目を憚る
  • 外聞を憚る
  • 「口にするのは憚りますが……」

「憚る」の意味(2)

2つ目の大まかな意味は以下の通りです。

 

④幅を利かせる。大きな顔をする。のさばる。
⑤はびこる。いっぱいに広がる。幅があって入りかねる。満ちふさがる。

こちらの意味の「憚る」は、「幅」や「はびこる」が語源とも言われ、「憚る」の「はば」を「幅」に、「はばかる」を「はびこる」に間違えて捉え、活用されるようになったという説もあります。

用例としては「憎まれっ子世に憚る」ということわざが適当ですが、これについてはのちほど解説いたします。

定型句「憚りながら」

「憚る」の副詞的用法に、「憚りながら」という決まり文句があります。次のような意味です。

 

①遠慮すべきかもしれないが、これから発言することを許してもらいたいという気持ちを表す。「畏れ多いことですが」「出過ぎたことですが」
②「他人から見れば取るに足らない者かもしれないが、これでも自分は……」という思いで、自負したり誇示したりする気持ちを表す。「生意気なようだが」「大きな口をきくようだが」
 
例文は以下のとおりで、かしこまった場で使われることが多い表現です。
  • 「憚りながら申し上げますが、社長の判断は間違っていると思います」
  • 「憚りながら、これでも医者のはしくれです」

「憎まれっ子世に憚る」

憎まれっ子世に憚る」とは、「人から憎まれるような者ほど世間では幅を利かす」という意味のことわざです。「幅を利かす」とは、地位・権力などを利用して威勢を振るったり、思うように振る舞ったりすることを言います。たくましく生き、幅を利かすことが基本の意味だそうですが、文脈によっていい意味にも悪い意味にもなります。

昔は「憎まれ子(ご)世に出(いず)る」と言っていたようですが、その後「憎まれっ子世に憚る」や「憎まれっ子世にはびこる」と言うようになりました。他にも類義語として「憎まれ子国に憚る」「憎がられてまめまめと」「憎まれ子の頭堅し」などがあります。

名詞「憚り」の意味

「憚る」は、「憚り」という名詞になると、次のような意味を持ちます。

 

①はばかること。恐れ慎むこと。差し控えること。
②差し支えがあること。支障。さしさわり。
③便所に行くこと。また便所。
④憚り様の略

③にあるように、人目を憚る場所という意味で、「憚り」には「便所」という意味もあります。ご年配の方から聞いたことがあるかもしれませんが、「厠(かわや)」などと同じく、現在ではあまり使われなくなった日本語の1つです。

「憚り」の例文

  • 憚りなく言う(①の用法)
  • 公表するには憚りがある(②の用法)
  • 「失礼して憚りに行ってきます」(③の用法)

「憚り様」とは

「憚り様(はばかりさま)」という表現をご存じでしょうか? 次のような場合に用いるいいまわしです。

 

①他人に手数をわずらわせたときなどに言う言葉。「恐れ入ります」「ご苦労さま」
②相手の非難を軽くかわして、皮肉で返すときなどに言う言葉。「おあいにくさま」

現在「憚り様」はあまり聞かれなくなり、「恐れ入ります」や「ご苦労さま」などに変わりましたが、古い小説などにはよく出てきます。

まとめ

「憚る」は心を部首としているように、本来は自分の気持ちを表す言葉であり、「遠慮」の気持ちや態度を表している言葉でした。その意味では、日本人の心を表す言葉の1つと言えるかもしれません。


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