「ジンクス」とは?
「ジンクス」(英語:jinx)とは、「縁起の悪いもの」または「因縁(いんねん)があるように思われる事柄」のことです。
なお、日本語においては「縁起の良いこと」や「縁起をかつぐもの」というプラスの意味で使われることもありますが、この意味は誤りであるとされています。
「ジンクス」の使い方
「ジンクス」は、身近な習慣や経験に基づいて見出される、悪い経験則、法則、主観的予測のことを指して使います。「誰々が〇〇すると、いつも△△になる」といった類の言説が該当するでしょう。
しかし、一般に「ジンクス」と呼ばれる事柄は、統計的な頻度や因果関係の分析、科学的・論理的な裏付けを伴わないことも多く、多くが主観的な経験則に基づくものであるがゆえ、「迷信」「オカルト」「俗説」と位置づけられることも少なくありません。
ただ、世に起こる物事のすべての因果関係があらかじめ科学的に検証されているわけではありません。ある程度科学性が証明された「ジンクス」もありますし、個人的な「ジンクス」を大切にしている人も多いようです。
「良いジンクス」は誤り
最初にも述べたように、「ジンクス」は「悪いもの」の意ですから、「良いジンクス」や「ジンクスのおかげで良い結果になった」という使い方は誤りとされています。「良い呪い」が存在しないのと同じだと考えましょう。
もし、どうしても良い意味で使いたいということであれば、「ジンクスを破る」という言い回しがありますので活用しましょう。「そんなものは存在しない」「気にしない、信じない」と言ってもいいかもしれません。
例文
- 外食好きの友人は、「初めての店に行くと、いつも定休日ってジンクスがあるんだ」と語っている。本当だろうか。
- 野球にはさまざまなジンクスがある。「代わった所に打球が飛ぶ」(交代したばかりの野手のところに打球が飛んでいく)などもその典型だ。
- トップ選手の〇〇さんは、試合前に何か物を落とすと負けるというジンクスを信じており、控室ではとても神経質になっていた。
- 日本では何でもない動作が、外国だと不幸を招き寄せるジンクスであることもある。
- 〇〇育ちは大成しないというジンクスを破り、彼は世界有数の富豪になった。
「ジンクス」の語源
英語「jinx」の語源は、ラテン語・ギリシャ語の「iynx」、キツツキの一種である「アリスイ」(蟻吸)であるとされています。なお、日本でも北海道や本州北部に生息している身近な鳥です。
このアリスイは、しばしば首を傾げるようにして180度回す行動をとる(警戒のために後ろを見る)ことから、不吉の象徴とされ、古くから呪術に用いられてきたというエピソードがあります。これが「jinx」の意につながったと考えられています。
学名では「Jynx torquilla」ですから、名前も「jinx」にかなり近いですね。(「torquilla」は「首をひねる者」の意)
有名な「ジンクス」の例
- 4や9の数字は「死」や「苦」を連想させ、不幸を招く。(ホテルなどではこれらの数字がつく部屋番号が欠番とされる)
- 13日の金曜日には悪いことが起きる。(キリストの処刑日、あるいは有名なホラー映画シリーズの影響と考えられる)
- 黒猫が目の前を横切ると不幸に見舞われる。
- 猫が顔を洗うと雨が降る。(雨が降る前は湿度・気圧が変化するため、それに対応しているという説もある)
- 風邪は人にうつすと治る。
- 北枕で寝るのは縁起が悪い。
「ジンクス」のまとめ
人は、良いことよりも悪いことのほうを記憶として残しやすいと言われています。そのほうが、危機回避のために役立つからです。何度も経験的に、法則性をもって訪れる「悪いこと」が「ジンクス」として記憶され、共有されるのは当然かもしれません。
また、トップアスリートのように、肉体や精神を極限まで高め、あとは「時運」や「天の配剤」に任せるのみという境地にいる者にとっては、常人には推し量れない微妙な因果の流れのようなものが「ジンクス」として感覚されるのかもしれません。
無根拠な迷信によって自由な行動が阻害されてしまうのは考え物ですが、時には「ジンクス」に頼ってみると、日々の出来事に思わぬ味付けが加わるかもしれません。