「アドリブ」とは?
日頃の生活で頻繁に耳にする「アドリブ」という言葉。ラテン語の”ad libitum(アドリビトゥム)”を由来とする外来語です。日本では「アドリブ」と省略された形で広まり、いまでは誰もが知るカタカナ語として通用しています。
「アドリブ」の意味するところは、一言でいうと「即興」です。楽譜や台本にあらかじめ定められていない演奏や演技を行うことを指し、もともとは音楽用語でした。
音楽用語としての「アドリブ」
音楽の世界では、ラテン語の”ad libitum”がいまなおそのまま用いられています。譜面上の略号は「ad lib.」で、もちろん口頭でも「アドリブ」で通じます。また、「アドリブ」と同じ意味で「インプロビゼーション(Improvisation)」と呼ばれることもあります。
クラシックから即興演奏の代表格ともいえるジャズまで、アドリブの手法は古くから演奏に活用されてきました。もっとも、アドリブを挟みこむことで曲自体が崩れてしまっては台無しですから、演奏者はコード進行や主題を理解していなくてはなりません。自分勝手に何でもやればいいということではなく、アドリブこそ技量やセンスが求められるんですね。ロックバンドのライブのギターソロなどもアドリブの要素を持っているといえるでしょう。
演劇用語としての「アドリブ」
お芝居においても、演者が台本にない言動(演技)をすることをアドリブといいます。演出上、最初から自由演技を指示されている場合と、演者の自己判断で勝手にアドリブを入れる場合と、状況はケースバイケースでしょう。また、「即興劇」と称されるお芝居では、台本自体がないに等しく、ひとつの舞台が丸々アドリブで進められたりもします。
また、こちらは演芸の世界になりますが、落語の寄席で、観客からキーワードをもらってその場で噺を作る「三題噺」なども、アドリブといっていいかもしれません。
テレビの「アドリブ」
上記の演劇畑から派生して、テレビ業界でもアドリブという言葉は一般的になりました。ドラマの名シーンがじつはアドリブだったなんてこともあるようですし、自由度の高いバラエティ番組でも台本進行はあるため、アドリブの入りこむ余地はあります。
一定の決めごとから逸脱して、そこに面白いアドリブを挟みこめるかどうかは、いわばタレントさんの腕次第ということになるでしょうか。収録されたアドリブはカットや撮り直しもできますが、生放送でのアドリブはやり直しがきかないため、場合によっては放送禁止用語をはじめとする不適切発言などが飛びだすこともあります。これを俗に「放送事故」といいます。
日常語としての「アドリブ」
上記の音楽用語、演劇(芸能)用語をもとに、いまでは私たちの日常生活でも「アドリブ」という表現が当たり前のように使われるようになっています。ここでは、事前準備をしていない質問にその場で考えて答えることや、想定外の出来事に臨機応変に対応することなどを指します。
(使用例)
- セミナー参加者から、予期しない質問を受けたが、アドリブで乗り切った。
- 飲み会の席でアドリブで一発芸を求められて困った。
- 「ごめん! 急ぎの案件が入ったから出掛けなきゃ。この書類について聞かれたらアドリブで対応しておいて」
「アドリブ」の類語・関連語
スキャット
音楽用語です。歌詞ではなく、意味のない音(「ダバダバ」「ドゥビドゥビ」「パヤパヤ」など)をつないで即興的に歌う唱法で、ジャズから生まれました。「フェイク」ともいいます。
当意即妙
「アドリブ」の意味を上手く表した四字熟語です。状況や変化に応じて、とっさに機転をきかせて対処することやその様子を指します。
ぶっつけ本番
こちらの場合、するべきことは事前に決まっているので「アドリブ」とは異なります。映画や演劇で、リハーサルなしで撮影や上演をすることを指しますが、日常においても準備なしにいきなり物事を始める際に使われる表現です。
まとめ
以上、「アドリブ」の意味や使い方をご紹介しました。
「事前準備なしに対応すること」は、経験や実力、センスがないとできません。突然「アドリブ」を振られても対応できるよう、日ごろから準備しておきたいですよね。