「興が削がれる」とは
「興が削がれる」<きょうがそがれる>とは、「(ある物事がきっかけで)楽しく盛り上がっていた場が急に白けてしまう。愉快な雰囲気が失われていく」という意味の慣用表現です。
「興が削がれる」は「興を削ぐ」の受身形ですから、「興を削ぐ」は「場を白けさせる。つまらなくする」ことを表しています。
次の項では、「興が削がれる」をより深く理解するために、「興」と「削ぐ」について見ていきましょう。
「興」と「削ぐ」の意味
「興」の音読みには、<キョウ>と<コウ>があります。<コウ>と読む場合は、盛んになる、新たに始める、あるいは、気持ちが高ぶることを表します。一方、<キョウ>は、楽しさやおもしろみ、心からわきでる感情という意味です。
「削ぐ」にはいくつかの意味がありますが、「興が削がれる」や「興を削ぐ」においては、関心や興味、勢いなどを失わせることを表します。
これらのことから、「興を削ぐ」は「楽しさを失わせること」、受身形の「興が削がれる」は「ある物事によって楽しさが失われること」を指していることが分かるでしょう。
「興が削がれる」の使い方
- せっかくの好ゲームも投手の乱調で興が削がれてしまった。
- 初デートは良い雰囲気だったが、彼の暴言で興が削がれた。
- お気に入りの服を着て出掛けたが、同じ服を着ている人を見かけて興が削がれた。
「興が削がれる」の類語
「水を差される」
「水を差される」<みずをさされる>は「水を差す」の受身形です。「水を差す」は「熱いものや濃いものに水を加えて温度を下げたり薄める」ことを表します。ここから派生したのが、「物事や人との関係がうまくいっているのを邪魔して、勢いをなくさせる」という意味です。
よって、「水を差される」は「物事がうまく進行している時に邪魔をされて勢いがなくなる」という意味です。勢いや興奮が薄らいで失われていくところが「興が削がれる」に似ています。
[例文]
- 顧客からの急な仕様変更により、順調だった開発は完全に水を差されたかたちになった。
- 彼女と映画館でデートしていたところ、映写機のトラブルで水を差された。
「白ける」
「白ける」<しらける>には多義語ですが、その中に「面白さがさめて気まずい雰囲気となる」という意味があります。この言葉も、濃い色のものが白く色褪せてくる様子を例えとした言葉です。「興が削がれる」に通じるところがありますね。
[例文]
- 楽しく映画の話をしていたところ、彼がその作品の文句を並べ立てたので座が白けた。
- 活発に意見が交わされていたが、彼の失言で一気に白けてしまった。
「寒い・寒くなる」
「寒い」にはいくつかの意味があり、「全然面白くない」という意味あります。「寒い雰囲気になる」や「場の空気が寒くなる」は、「面白みもなく寂しい雰囲気になる」ということです。
つまらないので盛り上がれない、面白くなくなったので興奮が冷めたといったことを比喩的に表現しているため、「興が削がれる」に類すると言えるでしょう。
[例文]
- 卒業旅行の相談で盛り上がっていたが、彼女のネガティブな発言で寒い雰囲気になった。
- 上司はことあるごとにダジャレを言うのでいつも場の空気が寒くなる。
「興醒める」
「興醒める」<きょうざめる>とは、「いままでの楽しい気分や興味が、わずかなことをきっかけとして薄らいでいく」ことです。「興が醒める」としても意味は同じです。
ここでの「醒める」は「高ぶった気持ちが落ち着く。興味が失われる」ことですから、「興が削がれる」と「興醒める」はほぼ同じ意味と言えます。なお、近年では「興醒める」と表記するケースが多いようですが、「興冷める」と書いても間違いではありません。
[例文]
- ドラマで好きになった俳優の初舞台を観に行ったが、全くの興醒めだった。
- 酒の席で上司が説教を始めたのでみんな興醒めて、早めにお開きとなった。
「興」を使った慣用句
「興」<キョウ>を使った慣用句には、ほかにも次のようなものがあります。いずれも、「興が削がれる」や「興醒める」の反対の意味に近い言葉と言えるでしょう。