「水を差す」の意味
水を加えること、注ぐことを「水を差す」と表現することがあります。日常生活に密着した言葉ではありませんが、料理や園芸、茶道などの分野で特によく使われます。「じょうろ」ののことを「水差し」と呼ぶこともありますね。
「差す」にはさまざまな意味がありますが、基本的な意味は「表面化すること」、「何かが生じることや具体化すること」です。「潮が差す」や「紅を差す」のように用いられることもあります。
これらの意味を踏まえて、慣用句としての「水を差す」について理解を深めてみましょう。
慣用句「水を差す」
「水を差す」という慣用句は、仲の良い関係やうまく進んでいる物事の邪魔をするという意味です。和気あいあいとした雰囲気や順風満帆の進捗を台無しにしてしまうことですね。
「水を差した」人に邪魔をするつもりがあったかのか、そうでなかったかは関係ありません。結果として物事の邪魔になっていれば、「水を差した」ことになります。
「水を差す」の使い方
悪口や皮肉
一般的に「水を差す」は、邪魔をされたことに対する不平や不満を表す時に使われます。「せっかく調子よかったのに、何てことしてくれるんだ」という文句ですね。
【例文】
- 順調に進んでいた仕事が、上司に水を差されて納期に間に合わなくなってしまった。
- 友人たちと盛り上がっていたら、「間違っている」などと水を差された。
- 「こっちはそれで楽しんでいるんだから、あんまり水を差さないでよ。」
閑話休題
「水を差す」は、「そろそろ本題に戻りませんか」という時に、クッション言葉(表現を和らげるために添える言葉)として用いることもできます。
この場合は「水を差すようで恐縮ですが~」や「水を差すようで申し訳ないが~」といったように使われます。丁寧な表現で相手への配慮を示しながら、脱線して盛り上がっている話を本題に戻すというわけです。
【例文】
- 水を差すようですまないが、そろそろ本題に入ってはどうかな。
- 水を差すようだけど、時間がないので今日はこれで終わりにしよう。
「水を差す」の由来
濃度や温度を下げる
一つ目の説は、水を「濃度や温度を下げるもの」とみなします。料理ではまさにそれを目的として行う操作なので、しっくりきますね。
熱くなり始めた二人の関係や、燃え上がるような情熱に水を差されては白けてしまいますね。ようやく煮詰まってきた案件も、また煮詰め直さなれけばなりません。
異物が混じる
もう一つの説は、水を入れる必要のない異物と考えるというものです。完成した料理に水を入れる必要はありませんから、このような場合は水は異物と言えます。
日常生活においては、正論を言ったことでせっかくの盛り上がりが損なわれてしまい、「お邪魔虫」扱いされてしまうといったイメージです。
「水を差す」が邪魔をするという意味であることを考慮すると、こちらの解釈もなるほどと思わせてくれますね。
「水を差す」の類語
冷水を浴びせる
「冷水(ひやみず・れいすい)を浴びせる」とはやる気や意気込み、盛り上がりを削ぐことです。発言や態度によって、やる気になっている人の意欲を奪うことです。ひやみずは「冷や水」と表記されることもあります。
テンションやモチベーションを下げるという点ではこの二つは同じです。邪魔をする印象が強ければ「水を差す」、意気込みや熱意を失わせるという感覚なら「冷水を浴びせる」です。
横槍を入れる
「横槍を入れる」も邪魔をするという意味の慣用句です。意味や使い方は「水を差す」とほとんど変わりませんが、「横槍」という昔の戦術に由来した言葉です。強いて言えば、「横槍を入れる」の方がより攻撃的で強い印象を受ける表現です。