「身が引き締まる思い」とは
「身が引き締まる思い」というフレーズを聞いて、気持ちが「シャキッ」と緊張するような感覚になったりすることはありませんか?
「身が引き締まる思い」は、このように緊張する様子を例えとして、「重い責任を自覚するなど、真剣になることによって心や気持ちが緊張する」ことを意味する慣用表現です。職場などで役職者の就任挨拶や首相の所信表明演説などでよく使われています。
「身が引き締まる思い」は、「身」と「引き締まる」と「思い」から構成されています。ここでは、「身」と「引き締まる」の意味を見ていきましょう。
「身」の意味
「身」の意味はたくさんあります。主なものは次のとおりです。「身が引き締まる思い」の「身」は、この1の意味です。
- 自分自身のこと。(危険が身に迫っている)
- 体のこと。(身につける)
- 地位や立場のこと。(身のほどを知る)
- 自分でやろうとす心がまえ。(仕事が身に入らない)
- 骨や皮以外の食べられる肉の部分(身の大きな貝)
「引き締まる」の意味
「身が引き締まる思い」の「引き締まる」は、この1の意味です。
- 緊張する。張り詰めたようになる。(気持ちが引き締まる)
- 取引の値段が上がる気配にある。(株式相場が引き締まる)
「身が引き締まる思い」の使い方
「身が引き締まる思い」を抱くのは、新しい環境に置かれたときに感じる緊張感や責任感などによることが多く、そのような場面で、周囲の人に向かって自分の決意を表明するようなときに使う表現です。以下にいくつかの場面ごとの例文をご紹介します。
「入社式」での表明
- 社会人としての一歩を踏み出し身が引き締まる思いです。
- 貴社に入社することができ緊張で身が引き締まる思いです。
「就任式」での表明
- このたび財団理事長を拝命しその重責に身が引き締まる思いです。
- 専務取締役という大役を仰せつかり、身が引き締まる思いです。
「結婚式」での表明
- 大勢の皆様にご出席いただき身が引き締まる思いです。
- 私ども二人に大変ありがたいお言葉をいただき身が引き締まる思いです。
「身が引き締まる思い」の類語
「粛然(しゅくぜん)とする」
「粛然とする」とは、「真剣につつしんで受けとめる」ということです。この他にも「もの静かで礼儀正しい、厳(おごそ)かなさま」という意味を持っています。「物事を真剣に受けとめるさま」が「身が引き締まる思い」に通じるところがあって、類語と言えます。
[例文]
- 祖先のお墓に手を合わせることで粛然とした気持ちになります。
- 粛然とした気持ちを求めて登山をします。
「兜の緒を締める」
「兜の緒(かぶとのお)を締める」とは、「勝って兜の緒を締めよ」というフレーズで使われています。字句の表す通り、「勝利などの良いことにおごる(兜の緒をゆるめる)ことなく、気持ちを引き締めて物事にあたる」という意味です。
「気持ちを引き締める」や「用心する」の意味は、「身が引き締まる思い」と共通するところがあります。
[例文]
- 明日は決勝戦がひかえています。「おごることなく勝って兜の緒を締めよ」の気持ちです。
- このチームには兜の緒を締めることも大切です。
「初心にかえる」
「初心にかえる」とは、「物事を最初に行う時に決心した新鮮な気持ちを常に忘れないようにする」ことです。気持ちが引き締まるところは似通っていて類語と言えます。
[例文]
- いつも恩師からは初心にかえることの大切さを言われています。
- 大敗にめげることなく初心にかえって頑張ってください。
「身」を用いた用語
「身を粉にする」
「身を粉にする」とは、「苦労することをものともせずに仕事をする」ことです。我が身が粉のようにくだかれるほど仕事をするという比喩的な表現です。
[例文]
- 彼の仕事ぶりはまさに身を粉にするほどであった。
- 母親は身を粉にして働き家計を支えてくれました。
「身から出た錆(さび)」
「身から出た錆」とは、「自分の悪行が原因で苦しむ」ことです。自業自得(じごうじとく)と同様の意味です。この言葉は「刀の錆は刀の身から発生して刀全体を錆びつかせる」という意からきた言葉です。
[例文]
- 彼は警察に逮捕されてしまった。これも身から出た錆です。
- 友人は身から出た錆の繰り返しばかりです。
「身につまされる」
「身につまされる」とは、「人の不幸などが自分のことのように思われる」ことです。「身」と「つまされる」という語が合わさった言葉です。「つまされる」は「自分と比べてしみじみ哀れに感じられる」という言葉です。
[例文]
- 母親の苦労話を聞いて身につまされ涙が出てきました。
- 監督の身につまされるような努力により今日のチームがあります。