「よしんば」とは?意味や使い方をご紹介

「よしんば」という言葉をご存じでしょうか。「よしんば」は「仮定」の話をする際に用いられる言葉です。しかし、「もしも」などと違って、その使い方にはいくつかの特徴があるのです。今回は「よしんば」の持つ意味と、その用法について解説いたします。

目次

  1. 「よしんば」は大和言葉
  2. 「よしんば」は副詞
  3. 「よしんば」の意味は?
  4. 「よしんば」の由来

「よしんば」は大和言葉

日常生活に馴染みがあるとはいいがたい「よしんば」という言葉。口語ではめったに耳にする機会はないかもしれませんね。古い文章、あるいは堅めの文章ではたまに見かけることもあるかと思います。また、方言と勘違いされる方も多いようですが、れっきとした共通語であり、中国その他の外国語由来でない、日本生まれの「大和言葉」です。

「よしんば」は副詞

「よしんば」は副詞に相当する語です。副詞というのは、「しばらくお待ちください」「あの映画はとても面白かった」「もしも明日晴れたら海に行こう」などのように、あとに続く文章の内容を強調したり、より良く状態を表すために用いられる品詞です。

よって、「よしんば」も必ず後ろに文を伴うことになります。では、「よしんば」とはどんな意味を表す副詞なのでしょう?

「よしんば」の意味は?

「よしんば」を他の表現に置き換えるとしたら、「仮に(~だとしても)」や「たとえ(~だとしても)」とおおむね同様の意味合いになります。ただし、「もしも」などと比較するとニュアンスや用法がいくらか異なりますので、まずは具体的に使用例を挙げたあとで、ご説明します。

「よしんば」の使用例

  • よしんば敵軍が攻めてきたとしても、わが軍はびくともしない  
  • よしんば体調が戻らなくても、次の試合を欠場する気はない
  • よしんば悪事が世間にばれなくても、罪の意識は消えないだろう

ご覧いただいたとおり、「よしんば」を「仮に」「たとえ」「もし」などに替えても、文意は変わらず通じます。そして、これらの副詞が「仮定」を表していることも、容易におわかりいただけるかと思います。

「よしんば」の特徴

その一方で、「よしんば」には、「もし(もしも)」などとは異なる特徴的なニュアンスがあります。それは以下の点です。
 

  1. 「よしんば」による仮定は一文の後段で否定される
  2. 「よしんば」のあとには悪い状況が置かれる
  3. 「よしんば」で仮定される事態は程度が大きい

「よしんば」の特徴の解説


上記の について。前述の使用例に見たとおり、「よしんば」に続く文章は「〇〇だとしても△△でない(※)」という形態を取ります。「もしも明日晴れたら海に行こう」のように、「よしんば晴れたら海に行こう」とは使いません。

※一点ご注意願いたいのは、”文末は必ず「~でない」という否定形で終わらねばならない”としているサイトもありますが、これはその限りではありません。「よしんば試験に落ちても、一浪して目標を達成するつもりだ」のように、文意として前段の仮定を後段が否定していれば間違った用法ではありません。

について。「よしんば」は、「敵軍が攻めてきても」「体調が戻らなくても」のように、悪い事態が想定される場合に用います。

これに関しては、「よしんば悪事が世間にばれなくても、良心の痛みは消えないだろう」のように使うこともあります。「悪事が世間にばれない」のは一見すると悪い事態ではないように思われますが、この発言者が、内心でいずれバレれるのではないかと危惧しているのだとしたら、そして、たとえバレなくても罪悪感に苦しむ未来が想像できているのだとしたら、彼にとってはこれもまた「悪い事態」と呼びうるのです。

について。「よしんば」で想定される悪い事態というのは、実際にはありそうにないことであったり、そうなっては困るという気持ちが非常に強かったりと、程度の度合いが大きいのです。改めて前述の使用例をご覧いただくとおわかりになるかと思います。

「もしも明日晴れたら海に行こう」は悪い事態の仮定ではありませんし、後段で否定もされていませんし、「明日晴れる」のは、いわばそうなっても不思議のない事態です。それとは異なるニュアンスを含んでいるのが「よしんば」であるということです。

「よしんば」の由来

最後に、「よしんば」といういっぷう変わった言葉の成り立ちについてもご紹介しておきます。

「よしんば」は漢字で書くと「縦んば」です。「縦(よし)」はこれ一字でも「縦んば」と同じ意味を持つ副詞で、「可(よ)し」から来ています。「可し」には古く「仮に許可する」「~なら許可する」というニュアンスがあったといいます。もともと仮定の意味合いが含まれていたんですね。

また、「よしんば」の「んば」ですが、こちらは「~ならば」ぐらいの意味合いで、連語としてある語に付いて強調表現を作ります。「縦(よし)」の意味が強調されて「よしんば」です。「虎穴に入らずんば虎児を得ず」など、古い文章で使われているのをご覧になったことがあるのではないでしょうか。


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