「聡い」の意味とは?
「聡い」(さと-い)は、賢い、感覚が鋭い、ある分野に長けているという意味です。「聡」の漢字の部首は耳へん、もともとの意味は耳がよく聞こえるということです。そこから、物事を素早くよく理解することを表すようになりました。
また、「聡い」のもともとの形は「悟る」から来ているとも言われています。「悟る」は、表に出てこない人の本音や心の動きを素早く推量することです。密かに察せられるところから、賢い、感覚が鋭いといった意味になったということです。
「聡い」の使い方と例文
「聡い」は、前項で述べたとおり頭が良いことなどを表し、ポジティブな意味で使われることがほとんどです。しかし、賢いについては、行き過ぎてネガティブな意味にも通じる場合があります。「聡い」の使い方を、両者の面から分けて見ていきます。
1.ポジティブな意味の「聡い」
「聡い」は「聡」の字義から、物事を良く聞き分けられて感覚が鋭い、聞いた先から理解や判断ができて賢いことを表せます。「聡い子供」(頭の良い子供)、「耳が聡い人」(耳の感覚が鋭い人)などのように使います。
【例文】
- まだ3つなのに難しい漢字が分かるなんて、聡い坊っちゃんですね。
- 彼女は絶対音感の持ち主で、耳が聡い人だ。
2.ネガティブな意味の「聡い」
あまり例はみられませんが、「聡い」の長所を裏を返すと悪賢く計算高い性格にもつながることがあります。
例えば、「利に聡い人」という言い回しは、自分の利益になることに鋭い感覚や能力を持っている人ということになるのです。この場合は「聡い」を使って悪い意味で賢い事を強調し、嫌味や軽蔑を込めて使う様子が感じられますね。
【例文】
- 故人のお見舞いにも来なかったくせに、伯母は遺産相続の話になると利に聡く、いの一番に出向いてくる。
- あの人は自分が有利になることはないかと耳聡いところがあるから、重要な話はしない方がいいよ。
「聡い」を使った語
耳聡い
「耳聡い」(みみざと-い)には以下の2通りの意味があります。
- 聴覚が鋭い
- 早耳(はやみみ)である
1の意味は、「聡い」の感覚が鋭いことに通じるところがあります。2の意味は、物事をはやく聞きつける能力に優れていることですが、あまり良いニュアンスでは用いられません。
「早耳」は、噂話や秘密の話、事件に関した情報などをいち早く聞きつける様子やそのような人について使われます。俗に言う「地獄耳」(人の秘密などをはやく聞き込んでくるなどの意味がある)ですね。
【例文】
- Aちゃんは耳聡く、鍵盤を見なくてもどの音を弾いたかが分かるんだ。
- あのマンションに芸能人が住んでいるんだって。耳聡いBさんが早速話を仕入れてきたみたい。
目聡い・目敏い
「目聡い」「目敏い」(両方とも:めざとい)は以下の意味があります。
- 人や物を見つけるのが速い・目の働きが良い
- 音や光で目が覚めやすい
1については、言葉通りに受け止めるなら褒め言葉ですが、否定的な表現で用いられることもままあります。人によっては、事細かくチェックをしていてあら捜しをしている様子、常にジロジロ見ている卑しい行為という印象を持つこともあるからです。
2は、朝の光や鳥などの鳴き声などに敏感になって、朝はやく目が覚めやすくなることを言います。
【例文】
- Cさんは経理処理の仕方が間違っていたり、数字の記入ミスなどがあったりすると目聡く探してくれるので助かる。
- 夫のシャツに口紅が付いているのを見つけたら、「目敏い」と文句を言われた。
- 隣のおばあちゃんは、「年を取ると目聡くなってね、4時に目が覚めちゃうよ」と愚痴をこぼしていた。
同訓異字「聡い」と「敏い」の違い
「さとい」は、「聡い」の他に「敏い」とも表記する場合があります。「敏」の字は、もともと行動が素早いことを指しました。そこから、「頭の回転が速い」「感覚が鋭い」などに派生していきます。
同じ「賢い」「感覚が鋭い」という意味でも、「聡」が耳の働きの良さから来ているのに対し、「敏」は頭と行動の速さから由来していることになりますね。また、「敏い」についても「聡い」と同様に、「悟る」という語が関係しているということです。