「律する」の意味
「律する」(りっする)とは、「おきてを定める」および「ある基準にあてはめて物事を処理する」という意味の言葉です。
「法律」「不文律」「黄金律」のように、「律」の字には「したがわせる」「おきて」の意味がありますから、それをサ変動詞「する」で動詞化したもの、と考えれば意味を捉えやすくなるかもしれません。
「律する」の使い方
自分を律する
「律する」は、多くの場合、「自分を律する」「(自分の)生活を律する」のように、何らかのルール・規律を基準に、自分自身のありかたを取り計らうという文脈で使います。
「自分を律する」ということは、その場その場の欲求や直感に頼るのではなく、計画や管理のもと、自制心と理性をもって行動するといったニュアンスです。自分自身の決め事に、自分自身が従うというかたちですね。
物事の多くは一朝一夕には成らず、長期的な視野と規律を持って臨むことが求められます。そうした観点から言えば、自己を律すること、自律は、社会的人間として求められる基本的資質ともいえるでしょう。
【例文】
- 受験生たるもの、厳しく自己を律して日々の勉学に臨まねばならない。
- 彼は自己を律することのできる人だから、悪者の誘いなどには乗らないだろう。
- 私の行動を律することができるのは、私自身の良心のみです。
相手を律する
「律する」という言葉を、自分以外の人間に用いる例はあまり多くありません。と言うのは、理由はどうあれ、「律する」ことは対象の自由を抑制し、行動内容を制限することに繋がるからです。
「私があなたを律する」という言説は、「私は自分独自のルールであなたを縛り付ける」と言っているのに等しいのです。「それは何となくダメだよ」と言われるより、「私のルールに従え」と言われるほうが無礼な印象ですよね。
軍規などの特別なルールは別として、道義や責任といったレベルのルールは、「誰かが律する」ものではなく、「自ら内面化し、自らを律する」ように教え導くことを意識したほうがよいでしょう。
【例文】
- 自分たちの正しさを根拠に他の集団を律しようとする風潮を、傍観してよいものだろうか。
- 軍人である彼は、軍ならではの特殊な規則にその行動を律せられていた。
- 自ら生み出した怪物を、彼は魔法によって律した。
物事を律する
主語によっては、人間相手ではなく物事に対して「律する」と言うこともできます。例えば自然界などは「弱肉強食や適者生存のルールによって律せ」られていると言えるでしょう。
また、学問的研究によって証明された「法則」は、その法則によって支配されている物事・現象を律していると言うこともできます。
ただし、「人間が人間社会を律している」とか「神が万物を律している」といった言説の真偽については、議論が必要となるかもしれません。
【例文】
- 高度な文明は、高度な法によって律せられる必要があると教授は言った。
- 経済学の法則が株式市場を完全に律するのであれば、誰も株で損はしないし、得もしないだろう。
- その夜の墓場は、常識が律している場所とは思えない、不気味な雰囲気が漂っていた。
「律する」の類語
「律する」の類語としては、以下のような言葉があります。
- 縛る
- 監督する
- 統制する
- コントロールする
このうち、「縛る」は対象の行動の自由をほぼすべて奪うような厳しいニュアンスですので注意しましょう。「監督」は、ずっと対象に注目して必要に応じて何らかの措置を取るという間接的な「律」のイメージです。
「統制」や「コントロール」は、全体の方針からみて対象を支配・調節・管理するといったニュアンスで、厳しさを含む場合もありますが、基本的には中立的な意味合いで使うことができます。