「してくる」の意味と使い方|日本語表現の多彩なニュアンスを解説

「ちょっと電話してくるね」「寒くなってきた」など、日常会話で頻繁に使われる「してくる」という表現。このフレーズには実に多彩なニュアンスが含まれているのをご存知ですか?動詞に「てくる」を付けるだけで、状態の変化や動作の継続、移動の様子まで表現できる日本語の豊かさを探ってみましょう。

してくるとは?してくるの意味

動詞の連用形に接続助詞「て」と補助動詞「くる」が結合した複合動詞で、状態の変化開始、動作の継続、移動の状態、動作の順序、一方的な動作など多様な意味を表現します。

してくるの説明

「してくる」は日本語の会話で極めて頻繁に使用される表現で、文脈によって全く異なるニュアンスを伝えることができます。例えば「雨が降ってきた」では状態の変化開始を、「ずっと努力してきた」では過去から現在までの継続を表します。また「買ってくる」のように、何かをしに行って戻ってくるという動作の流れを示す使い方も一般的です。移動の状態を表現する「走ってくる」や、一方的な動作を示す「文句を言ってくる」など、実にバリエーション豊かな表現が可能です。このように「してくる」は、単なる動作の表現ではなく、時間の経過や話し手の視点、動作の方向性までを含んだ日本語ならではの繊細な表現なのです。

普段何気なく使っている「してくる」にも、こんなに深い意味があったんですね!日本語の表現の豊かさに改めて気付かされます。

してくるの由来・語源

「してくる」の語源は、動詞の連用形に接続助詞「て」が付き、さらに移動を表す動詞「来る」が補助動詞化したものとされています。平安時代から使われ始め、当初は物理的な移動を伴う意味が中心でしたが、時代とともに抽象的な意味へと発展しました。中世以降、時間的な経過や状態変化を表す用法が増え、現代のように多様な意味を持つ表現として定着していきました。特に江戸時代の口語表現で頻繁に使われるようになり、現在の豊かなニュアンスを持つ表現へと成熟していったのです。

普段何気なく使っている言葉にも、こんなに深い歴史と文化が詰まっているんですね!日本語の奥深さに改めて感動しました。

してくるの豆知識

面白いことに、「してくる」は方言によって使い方が異なります。関西地方では「してくる」の代わりに「しとく」を使うことが多く、東北地方では「してく」と短縮される傾向があります。また、若者言葉では「電話してくる」が「電話しとく」や「電話しちゃう」に変化することも。さらに、ビジネスメールでは「〜して参ります」と謙譲語になるなど、場面によって様々なバリエーションが存在します。この表現の柔軟性こそが、日本語の豊かさを物語っていると言えるでしょう。

してくるのエピソード・逸話

人気俳優の堺雅人さんはインタビューで、役作りの際に台本の「してくる」のニュアンスを徹底的に研究すると語っています。特に時代劇では、「斬りてくる」と「斬ってくる」の微妙な違いにこだわり、監督と何時間も議論したそうです。また、アナウンサーの羽鳥慎一さんはニュース原稿で「寒くなってきました」という表現を使う際、単なる気温の変化ではなく、視聴者に季節の移り変わりを実感してもらえるよう、言葉の選び方に細心の注意を払っていると語っています。

してくるの言葉の成り立ち

言語学的に見ると、「してくる」は「ヴォイス(voice)」と「アスペクト(aspect)」の両方の性質を持つ興味深い表現です。移動の方向性を示す「方向性アスペクト」として機能する一方、話者の視点や主観性を反映する「主観性モダリティ」の要素も含んでいます。認知言語学の観点からは、物理的な移動メタファーが時間的・状態的な変化へと拡張された典型例とされ、日本語の空間認知が時間表現へどのように映射されるかを示す好例です。また、ポライトネス理論の観点では、話し手と聞き手の心理的距離を調整する機能も持っています。

してくるの例文

  • 1 仕事中に急に眠くなってきて、コーヒーを買いに行ってくるって言い訳して休憩しちゃうこと、ありますよね。
  • 2 友達とのLINEのやり取りで、既読つけたまま返事が遅くなると「今忙しいから後で連絡してくるね」って送りたくなるあの気持ち、よくわかります。
  • 3 寒くなってきたからそろそろ冬服の準備をしてこようと思いながら、まだ夏服のまま過ごしている自分に気づくあるあるです。
  • 4 ダイエットを始めたばかりの頃はやる気満々だったのに、だんだん面倒になってきて「明日から本気出す」って言い続けるパターン、共感できます。
  • 5 掃除をしていると、なぜか別のことをやりたくなって「ちょっと違うことしてくる」と言いながら結局掃除を中断してしまう、あるあるな経験ですよね。

「してくる」の使い分けポイント

「してくる」を使い分ける際には、文脈によって意味が大きく変わることを意識することが重要です。同じ「してくる」でも、状況によって全く異なるニュアンスを伝えることができます。

  • 状態変化を表す場合:自然現象や感情の変化(例:雨が降ってきた、感動してきた)
  • 動作継続を表す場合:過去から現在までの経験や積み重ね(例:努力してきた、学んできた)
  • 移動を伴う動作:物理的な移動を伴う行為(例:買ってくる、取りに行ってくる)
  • 一方的な動作:相手からの働きかけ(例:連絡してくる、文句を言ってくる)

特にビジネスシーンでは、カジュアルな「してくる」ではなく、より丁寧な表現に言い換えることがマナーとなります。

関連用語と比較

表現意味使用例
してくる話者中心の視点、現在への接近寒くなってくる
していく話者から離れる視点、未来への進行寒くなっていく
してしまう完了や後悔のニュアンス忘れてしまう
しておく準備や前もっての行動準備しておく

これらの補助動詞は、基本となる動詞に微妙なニュアンスを加えることで、日本語の表現を豊かにしています。特に「してくる」と「していく」の違いは、話者の視点の位置によって使い分けられるのが特徴です。

歴史的な変遷

「してくる」の表現は、日本語の歴史の中で着実に発展してきました。平安時代の文献には既に類似の表現が見られますが、当時は主に物理的な移動を伴う意味で使用されていました。

「てくる」の表現は、中世以降に時間的な概念へと拡張され、現代的な多様な意味を持つに至った。これは日本語の抽象化能力の高さを示す好例である

— 日本語史研究家 佐藤良夫

江戸時代には口語として広く定着し、現代のように5つの主要な意味を持つまでに発展しました。特に明治時代以降、文学作品や新聞記事を通じて標準語として全国に広まり、現在の多彩な使い方が確立されていきました。

よくある質問(FAQ)

「してくる」と「していく」の違いは何ですか?

「してくる」は話し手の視点が現在にあることを示し、動作がこちらに向かってくるニュアンスがあります。一方「していく」は話し手から離れていくイメージで、未来に向かって継続する意味合いが強いです。例えば「寒くなってくる」は現在の変化を、「寒くなっていく」はこれからの変化を強調します。

ビジネスメールで「してくる」を使っても大丈夫ですか?

カジュアルな表現なので、ビジネスシーンでは「〜いたします」「〜させていただきます」などの謙譲語に言い換えるのが適切です。例えば「連絡してきます」ではなく「ご連絡いたします」、「確認してきます」は「確認させていただきます」とするのが良いでしょう。

「してくる」を英語で表現するにはどうすればいいですか?

文脈によって訳し方が変わります。「電話してくる」は「I'll go make a phone call」、「寒くなってくる」は「It's getting cold」、「経験してきた」は「I have experienced」など、意味に応じて適切な英語表現を選ぶ必要があります。一つの表現でカバーできないのが難しい点です。

なぜ「してくる」にはこんなに多くの意味があるのですか?

日本語の補助動詞「くる」が、物理的な移動から時間的な変化、心理的な距離感まで、多様な概念を表現できるからです。もともと「来る」という移動動詞が、メタファー的に時間の流れや状態変化にも拡張され、豊かな意味を持つようになりました。日本語の表現の柔軟性の好例と言えます。

「してくる」の誤った使い方にはどんなものがありますか?

よくある誤用は、謙譲語が必要な場面でカジュアルな「してくる」を使ってしまうことです。また、方向性が矛盾する使い方(例: 「離れていってくる」)や、時制が一致しない使い方にも注意が必要です。文脈に合わない使い方をすると、意図が伝わりにくくなる可能性があります。