「パネマジ」とは
「パネマジ」は「パネルマジック」の略語ですが、ここでいう「パネル」とは一体何のことでしょうか。
風俗産業における「パネル」
日本の風俗産業においては以前から、サービスを行う従業員の顔写真などをパネルに表示して、客に選択させるという方法が取られていました。その際パネルには、特別写りがいい写真を採用したり、場合によっては加工されたりもするようです。
「パネル」による「マジック」
風俗店において「パネル」を見目の良いものにする理由は、実物よりも魅力的に感じられるような細工を施すことで、従業員が指名を受けやすくすることにあります。ところが場合によっては、実際の容姿からは程遠いくらい美化されていることも間々あるようです。
客の方からすれば、自分にとって好ましい容姿の人を選んで、いざサービスを受けようとウキウキしているところへ、蓋を開けて見たら、写真とは似ても似つかぬ人物が現れることになるのですから、それはビックリするに違いありません。
あるいは、まるで「魔術(マジック)」に騙された時のように「何のことやらサッパリわからない」という気持ちにもなるでしょう。このように「パネマジ」とは、「人目をあざむくようなパネル」による「マジックのような引っ掛け」のことを言います。
出張型風俗での「パネマジ」
「パネマジ」という言葉は、従業員の写真パネルが掲示されている「ソープランド」や「ファッションヘルス」といった、店舗型の風俗店から広まったものと考えられます。対して「デリバリーヘルス」のような派遣型の風俗店では、写真パネルを展示する場所はありません。
その代わりに昨今では、インターネットなどで従業員の写真を公開することが多いようです。当然ながらそれらの写真もまた加工済みの可能性があり、「呼んでみたらまるで印象の違う人が来た」ということもあるようです。このような場合でも「パネマジ」ということがあります。
「パネマジ」の定義
これらのことから「パネマジ」の現在における定義は、「風俗業界全体において、利用客が写真を元にサービス提供者を選んだにも関わらず、実際には全く印象の異なる人物が現れ当惑、もしくは騙されたと感じること」であると言えるでしょう。
「パネマジ」は違法か?
「パネマジ」は早い話が引っ掛けですから、人によっては「騙された」と感じるでしょう。その怒りが高じた結果、「違法行為だ。詐欺罪で訴えてやる」となる奇特な人も中にはいるかもしれません。では、「パネマジ」は違法行為なのでしょうか。
「パネマジ」は違法ではなさそう?
結論からいうと、違法性を問うことは難しい模様です。その理由としては、パネルは食品画像などと同じ「イメージ」に過ぎないため、詐欺にはならないという見方があります。が、それ以上に風俗産業それ自体が法律的にグレーゾーンであることから、訴え出る人が少ない、というのが実情なのではないでしょうか。
ちなみに、日本では売春防止法や風俗営業法などにより、風俗産業は厳しく規制されています。実際に性行為やそれに準ずる行為がサービスとして提供されている場合でも、「客と従業員が恋愛関係になり突発的に行為に及んでしまった」などと言い逃れしているケースがほとんどです。
「チェンジ」とは
とはいえ店側からすれば、そうしたリスクをなるべく回避したいことでしょう。そのために多くの店は「チェンジ」という方式を採用しているようです。これは、サービスを受ける相手を別の従業員に変更できるというもので、「家に入るまでならOK」とか「服を脱ぐ前ならOK」とか、店によってローカルルールがあるようです。
しかしながら、相手も同じ人間ですので、実際には「言いづらくてチェンジできない」ということもあるようです。また、チェンジされた従業員の方も、少なからず自分を否定されたわけですから、もちろん傷つくでしょう。そのため「チェンジするような人はおかしい」と言われてもいます。
文豪・夏目漱石も「パネマジ」を行なっていた?
見出しのように書くと誤解を招きそうですが、肖像写真の編集自体は100年以上前から普通に行われていました。
夏目漱石はよく知られた日本の小説家ですが、実際は鼻の頭や頬などに子供の頃かかった疱瘡のあと(あばた)があったにも関わらず、お見合い写真などはきれいに修正されていたようです(むかし千円札になった際の肖像画からも消されていました)。写真によるマジックは、今に始まったことではありません。
そしてまた風俗業界では、誰がいったかわかりませんが「パネマジを楽しめるようになって一人前」といった言説もあるようです。きっと漱石は行ったことがなかったでしょうが、いにしえの花柳界の「通人」を気取って「パネマジ」も受け入れてしまうのが、粋な大人の楽しみ方なのかもしれません。