「千日紅」の由来
「千日紅」は熱帯アメリカ原産のヒユ科の植物で、日本に渡来したのは江戸時代前期のことでした。「千日紅」と書いて「せんにちこう」と読みます。
厳密には「千日紅」とは、センニチコウ属センニチコウ(学名:Gomphrena globosa)のみを指す呼称ですが、通常「千日紅」といった場合、近縁種であるキバナセンニチコウ (学名:Gomphrena haageana) も含みます。
「千日紅」は「千日草(せんにちそう)」の別名でもあります。和名の由来は花期が長いことで、同様の由来を持つ「百日紅(サルスベリ)」よりもさらに長く咲くために命名されたといわれています。俳句では「千日紅」「千日草」ともに夏の季語になっています。
また、丸い花の形から、「ダンゴバナ(団子花)」「ダルマソウ(達磨草)」「テマリバナ(手毬花)」「センニチボウズ(千日坊主)」といった呼び方もされます。
学名「Gomphrena globosa」の「Gomphrena」は、ケイトウなどヒユ科の植物を指すギリシャ語です。「globosa」は「球状の」という意味のラテン語なので、「Gomphrena globosa」の意味は「丸いケイトウ」ということになります。
「千日紅」の英名
「千日紅」の英名は「Globe amaranth」です。「globe」は「丸い」、「amaranth」は「ヒユ科の植物」を指すので、「丸いヒユ科の植物」ということになりますね。
なお、英語では「bachelor's button」という呼び方もあるそうです。これは「独身者のボタン」という意味で、男性が結婚を申し込みに行くときにこの花をポケットに入れる風習があったことに由来します。
「千日紅」の特徴と主な品種
千日紅は一年草です。ただしこぼれ種が多いため、花をそのままにしておくと翌年も生えてくることがあります。一方、近縁種のキバナセンニチコウは多年草です。
開花期には丸く可愛らしい花を咲かせますが、じつはこれは花ではなく「苞(ほう)」と呼ばれる蕾(つぼみ)を包む葉なのです。本当の花はたいへん小さく、苞からわずかに顔を覗かせて咲きます。「長く咲くから千日紅」といいながら、鮮やかな色彩が長続きするのは「苞」であって、実際に花が咲いている期間はほんの一週間程度です。
開花期(苞が色づく時期)は初夏から晩秋まで長く続きます。乾燥や暑さよく耐えるため、園芸初心者でも比較的簡単に育てることができ、また、露地植えでも鉢植えでも育てることが可能ですが、もともと熱帯種ですから寒さには強くありません。
現在、千日紅は、濃い赤紫の「ローズネオン」、苺色が鮮やかな「「ストロベリーフィールズ」、小ぶりな花を株いっぱいに咲かす「千夏」など、さまざまな種が販売されていますから、園芸店であれこれ選んでみるのも楽しいと思います。耐寒性に秀でた「ファイヤーワーク」という品種もあります。
「千日紅」の用途
千日紅は、光合成を助ける働きのあるケイ酸を多く含むため、花(苞)が色褪せにくく、長持ちします。このため、日本では昔から切り花を仏花として用いてきました。
また、花部の水分量が少ないので、ドライフラワーにするのにも向いています。リースにしたり、ハーバリウムにしたり、また、日本ではドライフラワーを墓地に供えることはありませんが、古く西洋では「everlasting flower(永久花)」と呼んで、千日紅などを供花とする風習もあったそうです。
「千日紅」の花言葉
おしまいに、千日紅の花言葉をご紹介しましょう。
- 色褪せぬ愛
- 不朽
一般に知られているのは上記の二つですが、同様の意味合いで「不死」や「永遠の恋」を花言葉とすることもあります。開花時期が長く、ドライフラワーにしても鮮やかな色彩をとどめ、永遠性を感じさせる、千日紅ならではの花言葉ですね。
英名の項でご紹介した「男性が結婚を申し込みに行くときにこの花をポケットに入れる風習があった」というのも、大いにうなずける気がします。