「強ち」の意味
「強ち」は、(あながち)と読みます。現代では副詞として使われ、意味は以下の二つです。
- 必ずしも。一概に。
- 決して。
基本的に単体で使うことがなく、「強ち~ない」と打ち消しの言葉を伴います。100%断定しきれない、といったイメージですね。今日においては、ほぼ1の意味で用いられます。
形容動詞「強ち(なり)」は、古語で使われていました。身勝手な様子、強引である、ひたむき、必ずしも、といった意味があります。現代においてはほぼ用いられることはありませんが、「必ずしも」という使い方が次第に主流となり、現在に繋がっています。
「強ち」の語源
他をかえりみず、思うままに自分を押し通すこと、つまり、「強引で身勝手な様子」を表しています。先に紹介した形容動詞「強ちなり」にも、この意味が反映されています。
「強ち」の使い方
上述の通り「強ち」は、「強ち~ない」という使い方がもっとも一般的ですので、この用法について解説していきます。
「強ち~ない」は、ある意見や主張に対し、全面的に同意または否定をせず、断定を避けたいようなときに使います。あるいは、同意や賛成の気持ちを婉曲的に伝える場合もあるでしょう。
ただし、状況によっては、やや上から目線で回りくどい印象を与える可能性もあります。特にビジネスシーンでは、使うべきかを慎重に見極めたい言葉です。目上の相手に用いることは避けましょう。
例文
- 第一印象で全てが決まるというのは、強ち嘘ではない。
- 君の指摘は、強ち的外れとも言えないね。
- 安全なサプリだと聞いたが、飲みすぎた場合を考えると強ちそうとも言い切れない。
- 弾丸旅行のスケジュールに驚いたが、シュミレーションしてみると、強ち無理な話でもない。
- これまでの経験が役立っているのだとしたら、遠回りしてきた人生も、強ち無駄ではないだろう。
婉曲表現の言い換え
ビジネスシーンなどでは、遠回しな表現が好まれることも多いでしょう。しかしながら、婉曲的な言葉は、かえって相手に伝わりづらくなることもあります。ストレートな言葉のほうがよいか、それとなく伝えるほうがよいか、相手や状況を考えて使い分けたいものですね。
では、先述した例文を用いて、ニュアンスを比べてみましょう。
【例1】
- 君の指摘は、強ち的外れとも言えないね。
- 君の指摘は、おおかた的確だ。
【例2】
- 弾丸旅行のスケジュールに驚いたが、シュミレーションしてみると、強ち無理な話でもない。
- 弾丸旅行のスケジュールに驚いたが、シュミレーションしてみると、意外と行けそうな気がする。
それぞれほぼ同じ意味の文ですが、違った印象に見えるかもしれません。例1は、2つ目の文のほうが、より「君」を認めているような感じがあります。また、例2の2つ目の文は、「無理」や「ない」などの否定的な言葉がないことで、1つ目の文よりも、やや前向きなイメージがありますね。