「疾風迅雷」とは
「疾風迅雷(しっぷうじんらい)」とは、はやい風と激しい雷のことで、そこから「行動や勢いが極めて速く、激しいこと」
「疾風」は「はやて」(早く吹く風)、または、気象における風力階級5(風速毎秒約8メートルから10.8メートル)の強い風のことです。一方、「迅雷」の「迅」には、勢いが激しくて急なことという意味があります。 を例えることわざです。
「疾風迅雷」の語源
「疾風迅雷」の中国の古典に由来します。それは、儒教の経書の一つで、おもに「礼」の倫理的意義に関する古説を集めた書物『礼記(らいき)』の中の「玉藻(ぎょくそう)」の、以下のような記述です。
読み:もし疾風迅雷甚雨(じんう)有れば、すなわち必ず変じ、夜といえども必ず興(お)きて、衣服し冠して坐(ざ)す
意味:もし疾風が吹いて激しい雷や雨が降ったら、必ず居住まいを改め、夜でも必ず起きて、衣服を着て冠をつけて座って(事態にそなえている)
事態が急変したときにも迅速に対応できるように備えていることを指すこの文章から、「疾風迅雷」が前記の意味でも使われるようになっていきました。
「疾風迅雷」の使い方
- イクメンの彼は、疾風迅雷のごとく仕事をして、きっちり定時に退社する。
- ツール・ド・フランスの応援に行ったが、目の前をたくさんの自転車が疾風迅雷のように激しいバトルをしながらあっという間に通り過ぎて行った。
- アマ5段の実力があったので、奨励会の若手棋士に手合わせしてもらったら、疾風迅雷の早指しであっという間に王手をかけられた。
- 桶狭間(おけはざま)の戦いで今川義元を討った織田軍の奇襲攻撃は、疾風迅雷を絵に描いたようなものだったらしい。
「疾風迅雷」の類語
「電光石火」
「電光石火(でんこうせっか)」は、稲妻や火打石を打った時の一瞬の光や火花などから、極めて短い時間や素早い動作を意味する言葉です。素早い行動、動作などが「疾風迅雷」の類語と言えるでしょう。
【例文】
- この歌舞伎の演目では、電光石火のごとく一瞬で役者の姿が変わる早変わりが見どころだ。
- 剣道日本一を決める決勝戦。A選手の電光石火の小手打ちに、B選手は反応しきれなかった。
「疾風怒涛」
「怒涛」は、激しく打ち寄せる大波のことです。「疾風怒濤(しっぷうどとう)」は、強い風と荒れ狂う波が押し寄せるように、困難な状況にあることや時代が激しく変化しようとしていることに例えています。「激しい動きや変化」という点では「疾風迅雷」に似ていますね。
【例文】
- ようやく一つ問題を解決したと思ったら、疾風怒涛の如く次々と問題が発生してきた。このプロジェクトは大丈夫なんだろうか。
- 世界的な感染症の広がりで、有無を言わさぬ生活スタイルや価値観の変化が起こっている。この現状から、今は疾風怒濤の時代と言ってもいいだろう。
「疾風怒濤」は、元々ドイツ語の「Sturm und Drang(シュトゥルム・ウント・ドラング)」の日本語訳です。これは、18世紀後半、ゲーテやシラーを中心にして興った文学上の革命運動を指しています。
この運動は、当時のドイツ社会にはびこっていた理性中心の啓蒙主義や古典主義に反対して、感情の自由と人間性の解放を強調するものです。これが、やがてロマン主義へとつながっていきました。
「即断即決」
「即断即決(そくだんそっけつ)」は、物事をその場ですぐに判断して決めることです。「断」も「決」も「決める」ことを指しますから、「即断即決」は同じ意味の言葉を重ねて強調していることが分かりますね。なお、「即決即断」と言うこともあります。
「即断即決」した結果、すぐに行動に移す場合もあることを考慮すれば、「疾風迅雷」の類語に挙げられるでしょう。
【例文】
- 今度出た新車をディーラーで試乗して気に入ったので、即断即決、その場で買った。
- ビジネス誌などには、成功の秘訣は即断即決だと言い切っている記事が多い。