「のし上がる」とは
「のし上がる」は、漢字では「伸し上がる」と書きますが、ふつうはひらがなで表記されます。意味は次のとおりです。
- 他のものを抑えて、地位などが急にあがること。財産が急に増えること。
- 横柄な態度で上にあがること。横柄にふるまうこと。
現代ではもっぱら1の意味で使われる言葉で、2は少々古い用法です。1の意味では、突然地位が上がったりした人について、他人が「ねたましい」「うらやましい」「うさん臭い」などと評する意味で用いられることが多いです。
「伸」は、「のびる。のばす」という意味を持ち、「のし上がる」は「のびて上へあがっていく」様子から、「地位が上がる」という意味を表すようになったと考えられます。
「のし上がる」の使い方
「のし上がる」には、他人の成功に対する不信感や嫉妬心などの含みがあります。そのため、ほめ言葉で使われることはあまりなく、相手の成功などに対して皮肉ったニュアンスを込めて言うときによく使われます。
また、その成功に対する畏怖・尊敬のような気持ちを表すこともあります。
例文
- 彼女はルックスの良さと金持ちの娘であるという理由で大学のマドンナにのし上がったけど、性格は最悪だ。
- 豊臣秀吉は「ひとたらし」の才能で、織田信長の草履取り(ぞうりとり)からのし上がり、天下を統一した。
- 日本は、第二次世界大戦で敗戦後、驚異的な復興と経済成長を成し遂げて、経済大国にのし上がった。
- それまで無名だった彼は、出演した映画が海外で権威ある賞を受賞したとたん、一躍スターダムにのし上がった。
「のし上がる」の類語
「台頭する」
「台頭(たいとう)する」は、「頭をもたげる(頭を上げる)」という動作を表す意味から、「次第に勢いが増してくること」という意味を持つに至った言葉です。「のし上がる」と同様に「上に伸びて上がっていく」という意味が込められています。
本来は「擡頭」と書きますが、現在では代用文字の「台頭」が使われています。なお、「擡(たい)」には「持ち上げる」という意味があります。
【例文】
- 飛鳥時代に伝来した仏教は、天皇の保護を受けてたちまち台頭していった。
- その会社は小さな町工場だったが、次々と革新的な特許技術を開発して、業界の新興勢力として台頭してきた。
「頭角を現す」
「頭角を現す(とうかくをあらわす)」は、「学問や才能、技量などが人よりも優れている」ことを意味することわざです。「頭角=頭の先」を「他よりも高くしている」ことからこのような意味になりました。
もともと持っている才能が、徐々にあるいは急に表に現れてくるというニュアンスがあり、「のし上がる」と類似の表現です。
【例文】
- ドラフト外だった彼は、テスト生として入団するとたちまち頭角を現して、半年後には1軍登録された。
- 小学生のころから頭角を現した彼は、中学生になると史上最年少でプロ棋士になった。
「下剋上」
「下剋上(げこくじょう)」は、「身分や地位の低いものが、上の者を押しのけて権力をにぎる」ことです。日本の南北朝時代から戦国時代にかけての世の中の動きから出た言葉で、豊臣秀吉が下剋上の代表と言えるでしょう。まさにのし上がってきたわけですね。
「剋(こく・かつ)」には、「うちかつ」という意味があり、漢字を見ても下が上に打ち勝つという意味がわかります。
【例文】
- 日本の戦国時代は、下剋上で権力を得た武将が数多くいた。
- モノづくりで日本経済を支えていた大企業をIT産業がしのぐ現代は、まさに下剋上の時代といえるだろう。
「座を奪う」
「座を奪う(ざをうばう)」は、「権力や地位のあるものからそれを奪い取る」ことです。「のし上がる」よりも強い響きがあります。
「座を奪った」ことを第三者が使うと皮肉ったニュアンスが、「座を奪われた」と受け身形で使う場合には悔しさが感じられることもあります。
【例文】
- 社内の権力闘争で専務派が勝ち、○○専務が社長の座を奪い取った。
- その映画では、わき役の演技が際立っていて大評判となり、主役の座を奪った形になってしまった。