「倣う」とは?
「倣う」(ならう)とは、あるものを手本として、同じようなことを行う、先例をまねて、そのとおりにする、という意味の動詞です。
学校で、朝礼や体育で整列するさいに、「前へならえ!」という号令がかかったことを覚えているでしょうか。前の子と同じように両手を前に伸ばし、間隔をつくって並びましたね。
何度も繰り返して習慣になっている、慣れ親しむ、という意味もかつてはありましたが、現代日本語では使われていません。
「倣」の字義
「倣」という漢字は、音読みが、(ほう)、訓読みが(なら・う)。意味は、ならう、まねる、です。
「倣う」の読み方は分かりづらいかもしれませんが、「模倣(もほう)」は比較的よく知られている言葉でしょう。「模倣」とは、他のものに似せること、まねることを表します。
「倣う」の使い方
「倣う」の使い方のポイントは、先述したように必ず(何に倣うのか)という、具体的な対象を明らかにすることです。
対象となるものは、人間、法則、物質、自然など、非常にさまざまですが、「手本として」というニュアンスがあることから、ポジティブな行動・行為をまねることを表します。
文例
- 恩師の鈴木先生に倣って、僕も居場所のない子どもに勉強を教えるボランティアを始めたよ。
- 報告書は、前任者の書き方に倣って書き、12日までに提出してください。
- A社のパッケージデザインに倣って、我が社も洗練されたものを作ってほしい。
- 人類も、自然に倣ってあるがままに生きたほうがいいと思う。
- B社の企業理念のありように倣い、我が社も小売店との共存共栄を目指したい。
「右に倣え」について
「倣う」を含む定型的な言い回しのひとつに、「右に倣え」があります。意味は以下の2つです。
- 先例に従う。
- 自分で考え判断することなく、他者のまねをする。
もともとこのフレーズは、良い意味でも悪い意味でも使えるものですが、「自分で判断する力がない」というネガティブなニュアンスで使われるケースが圧倒的に多いことを理解しておきましょう。
【文例】常に右に倣えで行動していると、独自の発想で動く力が衰えてしまうぞ。
「習う」とは?
「倣う」以外に(ならう)と読む言葉として、「習う」があります。こちらのほうが、見聞きする頻度が高いかもしれません。それぞれの意味を混同しやすいですから、「習う」の意味もしっかりと理解し、「倣う」と使い分けることができるようにしましょう。
「習う」には、2つの意味があります。
- 知識や技術を他者から教えてもらうこと。
- 繰り返して練習や学習をして身につけること。
一般的には、1の意味で使うことが多い言葉です。2の意味はあまり用いられることがないため、今回は詳述を避けます。
1の意味では、教師から数学を習う、先輩から仕事を習う、など文例は枚挙にいとまがありません。水泳を習う、のように教える人の存在を省略する例も多くみられます。必ず(なにを習うか)の目的部分を挙げ、「~を習う」という言い回しで使います。
文例
- 私は、幼稚園の頃から15年間、同じ先生にピアノを習ってきました。
- デスクワークで肩がこるので、ヨガを習うつもりよ。