「喝を入れる」は誤り
「かつを入れる」という言葉は、やる気のない人にやる気を出させるときなどによく使われますが、「喝を入れる」だと思っていませんか?一見すると正しいように見えますが、「喝を入れる」は誤りです。
相手を元気づけるときには、「活を入れる」とするのが適切です。やる気のない人に対して使いますから、叱責する意味も込めて「喝を入れる」とする方もいらっしゃるようですが、正しい表記は「活を入れる」です。
「活を入れる」の意味
「活を入れる」には、柔道などの術によって気絶した人を蘇生させるという意味があります。これが転じて、元気や気力がない人に対して、刺激を与えることで元気づけたり気力を起こさせるという意味も持つようになり、多くの場合、この意味で用いられます。
上記のような意味が「活を入れる」の本来の意味なのですが、先述したように、やる気のない人に「しっかりしろ!」という厳しい注意を込めて「叱責する」という意味で使われることも少なくありません。
「活を入れる」の使い方
「活を入れる」は、元気や気力をなくしている人に元気や気力を取り戻させるために、個人または集団に刺激を与えることを指して使います。もちろん本来の意味である、気絶した人を蘇生させることを表す際にも使用します。
仲間で大声を出すことや、やる気になるような言葉を掛けられるなど、刺激となることの内容は関係なく「活を入れる」と使われます。
例文
- 練習中に気絶してしまった選手に活を入れて蘇生させた。
- 強敵を前にして、試合直前だというのに戦意を喪失している選手に対して活を入れた。
- 先日のプロジェクトの失敗によって落ち込んでいる部下たちに活を入れることにした。
「喝」と「活」の意味の違いは?
そもそも「喝」と「活」にはどのような意味の違いがあるのでしょうか?それぞれの意味を見てみましょう。まず、「喝」には次の意味があります。
- 叱る。怒鳴りつける。
- 声を荒げておどす。
- 大声で叫ぶ。
- 禅宗で言語では表現できない心の働きを表したり、誤った考え方を叱って反省させる時に発する叫び声。
次に、「活」は以下のような意味です。
- 生きること。
- 気絶した人をよみがえらせる術。
- 勢いよく動き、活発なこと。
このように「喝」と「活」はまったく意味が違います。「叱責」という意味も込めて「喝を入れる」とするのも適切なように見えますが、怒鳴り声や大声である「喝」を相手に「入れる」のは不自然な表現と言えるでしょう。
「活を入れる」の関連語
「活を入れる」が多く使われている「元気づける」という意味の関連語についてご紹介します。
【奮起させる(ふんきさせる)】
「奮起させる」は、気力や勇気を奮い起こさせるという意味です。「奮起」には「気力を奮い立たせる」という意味があります。「奮起を促す(ふんきをうながす)」と言い換えることも可能です。「落ち込んでいる部下を奮起させる」「後輩の奮起を促す」のように使います。
【励ます(はげます)】
「励ます」には、相手の元気や勇気が出るように力づける・応援するという意味があります。「元気のない友人を励ます」のように用います。また、元気や気力が出ない自分自身に対して「自分で自分を励ます」のように使用することもあります。
「叱責」の意味も込めて「活を入れる」を使いたい場合
誤った表現にもかかわらず、「喝を入れる」という使い方が続くのは、叱りつつ元気づけたいケースも少なくないということでしょう。そのような場合には、「叱咤激励(しったげきれい)」を使うこともできます。
「叱咤激励」とは、大声で叱るように励ますという意味です。「叱咤(しった)」は「大声で叱りつけること」を、「激励(げきれい)」は「奮起するように大いに励ますこと」を意味します。
また、相手のあまりにもひどい状態に対して「厳しく注意をして現状を認識させることが大事」という思いが強いのなら、「喝を入れる」ではなく、そのまま「叱責する」と表現した方が意図が伝わる可能性もあります。
【例文】
- 新しい仕事に慣れず、失敗続きの部下を叱咤激励した。
- 信頼する仲間たちの叱咤激励によって、難しい課題も乗り越えることができた。