「湧く」の意味
「湧く」(わ-く)の意味は以下の通りです。「涌く」とも表記します。
- (地面の中から)水が出る
- 汗や涙が勢いよく出て止まらない
- 感情が生じる
- 物事が立て続けに起こる。急に表面化する。勢いが盛んになる
- 虫(不快なもの)が発生する
「湧」は、水を表す「氵」(さんずい)が付いていることから水に関係した漢字です。字義は、水が吹き出す、水が次々と出てくることです。1の意味の「水が出る」ことが、もともとの意味で、2~5の意味は「水が出る」様子から派生しています。
「湧く」の使い方と例文
1.水が出る・泉
「湧く」は、もともと地面の中から水がこんこんと表面に出てくる様子を言い、出てきた水自体を「湧き水」(わきみず)と呼びます。水が湧き出る場所を表す「泉」を用いて「泉が湧く」のような形で使われます。
【例文】
- 森の中に泉が湧いた。
- 静岡県の駿東郡(すんとうぐん)清水町には富士山の地下水が湧いた柿田川湧水群がある。
- 地中を深く掘ってみると、温泉が湧くこともあるそうだ。
2.汗や涙が勢いよく出て止まらない
水が湧いて出る様子を人になぞらえて使うこともあります。汗や涙は身体から出てくる水分です。暑さなどが原因で汗が止まらない状況、喜びや悲しみで大きく感情が揺さぶられて、とめどなく涙があふれ出る様子をたとえています。
【例文】
- 炎天下で草むしりをしていたら、汗が湧いてきて止まらない。
- 父が息を吹き返し、ほっとして涙が湧き出てこらえることができなかった。
3.感情が生じる
「湧く」で、何らかの原因で様々な感情が心の中に生じる様子を表せます。ポジティブとネガティブいずれの心情にも用いられ、不意に巻き起こる強い心の動き全般について表現できます。
【例文】
- 希望校に入学が決まり、喜びの気持ちが湧いた。
- Aさんと共通の趣味があると知り、にわかにAさんに興味が湧いてきた。
- 裏切られたと知り、彼に対する憎しみが次々と湧いて抑えられない。
4.立て続けに起こる
「湧く」で、物事が急に立て続けに起こること、勢いが激しくなることを表現します。また、急に水が湧き出るところもあるため、急に表面化するといった意味合いでも使われます。
【例文】
- 講師の話が面白かったので、参加者に笑いが湧きおこった。
- 黒い雲が勢いよく湧いてきたので、雨が近いと思い洗濯物を急いで仕舞った。
- リラックスしているとアイディアが次々と湧いてくるね。壁にぶつかった時にそうなってほしいのに。
5.虫(不快なもの)が発生する
「湧く」は、虫などの不快なものが数多く発生する場合にも使われます。害虫だけでなく、嫌な感情を呼び起こすタイプの人物にも使う場合があります。
「荒らし」というネットスラングがあります。「荒らし」の意味は、インターネット上の掲示板やチャットなどでルールを守らずに、他の参加者を不愉快にさせる書き込みをする人のことを指します。
このような人物は1人だけでは済まないことがほとんどです。次々と出て同じような迷惑な書き込みをし続けることから、「荒らしが湧く」「アンチ(対象の人や物を嫌う人)が湧いてウザい」などの形で使われます。
【例文】
- 台所にコバエが湧いて困っている。
- ファンの掲示板にタレントをバカにする発言を書き込む荒らしが湧き、削除要請をした。
「湧く」と「沸く」の違い
「湧く」の同訓異字語に「沸く」があります。「沸く」の意味は以下の通りです。
- 水が加熱されて熱くなる
- (1から派生して)人の感情が高ぶっている状態を指す
「湧く」は、水の温度を変えずにそのまま外側(地上)に出ることです。一方の「沸く」は熱せられたり、激しく沸騰したりする様子を表します。前者は「お湯(=温泉)が湧く」、後者は「(風呂の)お湯が沸く」などの形で用いられます。
2の意味では、人の様子を熱湯の状態にたとえて、気持ちが高ぶって興奮している様子を表します。「ライブで観客が沸く」「サヨナラ勝ちで観客が沸く」などのように使われます。「湧く」は、単に心が強く動かされている状態を表しているに過ぎず、興奮している状態は含まれていません。