「励む」とは?
「励む」(はげむ)は、大きくわけて2つの意味を持つ動詞です。①熱心に、気持ちをふるいおこして物事をおこなう。精を出し、心を打ち込み、目的とする行為に努める。②気力、力をふるいおこす。
①と②の意味の差はそれほどありませんが、①は「~に励む」という形で用いられることがほとんどです。②は古語での用法で、「力をふるいおこす」ことに重点があり、「~を励む」という使われ方が多いようです。
「励む」の使い方
「心を奮い起こしてなにかに努める」というニュアンスが強い「励む」ですが、実際のところは、なにかをさかんに行うことだけでも「励む」という表現は用いられています。
例えば、「本能」に基づく動物たちの行為は、「心を奮い起こしている」わけではありません。しかし、リスなどが集めた木の実を地中に隠したり、親鳥が雛たちに何度も餌を運ぶ様子は、人間から見て「励む」と表現することができます。
すなわち、「励む」という言葉は、動物の活動、自分の喜びとしてなにかに打ち込む行為、なんらか目的達成のために気力を奮い起こし覚悟をきめて努力する行為など、かなり広い範囲で使うことができる言葉です。
「励む」の文例
- ほぼ徹夜で、課長に提出する企画書の制作に励んだ。
- 雛に餌を運ぶのに励んでいる親鳥を見ていると、本能の偉大さに胸を打たれる。
- バスケットボールが好きでたまらないので、長時間練習に励むことは全く苦にならない。
- 高校の入学式で校長先生から、たくさんの友人を作り、学業やクラブ活動に励むようにとの言葉があった。
「励む」の類語
「頑張る」の意味と使い方
「頑張る」(がんばる)には、3つの意味があります。①苦難に負けず、目的とすることを成し遂げるために努力すること。②自分の意見や意志を押し通すこと。我を張る。③ある場所を占めて、動こうとしないこと。
「頑張る」は意味からもわかるように、「励む」と比べて、頑(かたく)なな様子の強い言葉です。②の意味の「我を張る」が「頑張る」の語源という説もありますが、わけても②と③の意味に「我」というニュアンスが強く出ています。
「励む」の類語としては、①の意味が当たります。この意味においては、比較的「頑な」さは薄れて「励む」とほぼ同じような、「心を奮い立たせて努力する」という使い方がなされています。
【文例】
- 司法試験に二年続けて落ちてしまったが、気持ちを立て直し、もう一年頑張ることにした。
- 文化祭の準備のため、前日夜遅くまでクラスのみんなで頑張った。
「尽力する」の意味と使い方
「尽力する」(じんりょくする)は、読んで字のごとく、目的の達成のために力を尽くすこと、努力することを意味します。
「尽くす」という言葉も「力を尽くす」「手を尽くす」などのかたちで、「励む」と同じく「努力」を意味しますが、「もてる力の限りを尽くす」というニュアンスがあります。
そして、同じニュアンスが「尽力」にもあるため、個人差はあるものの、目上の人などに使うときは、どちらかといえば「尽力いたします」と言うよりも「励みます」と言ったほうが熱意が伝わるかもしれません。
【文例】
- 別居してしまった山本夫妻をとりなすために、間に入って尽力するつもりだ。
- 大学で新しいスポーツサークルを立ち上げるために仲間と尽力した。
「奮闘する」の意味と使い方
「奮闘する」(ふんとうする)は、2つの意味を持つ言葉です。①力をふるい戦うこと。②力をつくして努力すること。「励む」の類語としては、②の意味が当たります。
①の意味では「孤軍奮闘」という四字熟語があります。この言葉は、もとは支援(しえん)する者がいない状況の中で一人で必死に戦うことを意味する言葉です。
そこから転じて、一人で困難なことに努力することも意味しますが、その場合の「奮闘」も「目的に向かっての努力する」という点で「励む」の類語足りえます。
【文例】
- 依頼された原稿を締切に間に合わせるために、日夜奮闘している。
- 三人の販売員のうちの二人が病欠してしまい、中村さんは売り場で孤軍奮闘した。