「暖簾に腕押し」の意味
「暖簾に腕押し」とは、他人に何かしらの働きかけをしても、反応がなく、張り合いがないことを意味します。
「暖簾に腕押し」の由来
「暖簾」とは
「暖簾」とは、出入口にたらす布のことです。屋号などを染め抜き、商店の入口に掲げて営業中であることを示したり、ご家庭で部屋を簡易的に仕切ったり飾ったりするのに使用します。
「腕押し」とは
「腕押し」とは、現代でいう「腕相撲」の事です。普通は肘を床などにつけ、お互いの掌を組み合わせて競う遊びです。
「暖簾に腕押し」とは
「暖簾に腕押し」の「腕押し」の解釈には、以下のような2つの説があります。
- 暖簾相手に腕相撲をしても張り合いがない
- 暖簾を腕で前に押しても張り合いがない
多くの辞書では二番目の「暖簾を腕で前に押す」という解釈をとっています。暖簾を腕でいくら前に押しても何の手ごたえもないことから、「反応がない」「効き目がない」ことの例えとして、1890年ごろから使われ始めたと言われています。
「暖簾に腕押し」の使い方
- 夫に脱いだ靴下をかごに入れるよう何度言っても「暖簾に腕押し」で、本当に腹が立った。
- 本人にやる気がなければ、親が何を言っても「暖簾に腕押し」だ。
- こちらからどんなに連絡しても「暖簾に腕押し」だから、脈がないということだろう。
- 口をすっぱくして言っても「暖簾に腕押し」なのであきらめた。
どんなに注意しても、小言を言っても、叱っても、コンタクトをとっても、「無反応」という状況で使われていますね。
「暖簾に腕押し」の類語
反応がないことの例えとして「暖簾に腕押し」以外にも多くの言葉が使われています。
- 糠に釘(ぬかにくぎ)…糠=玄米を精米するときに出る粉。
- 豆腐に鎹(とうふにかすがい)…鎹=二つの物をつなぎ合わせるコの字型の大きな釘。
- 石に灸(いしにきゅう)…灸=ツボ上のもぐさに点火し、温めて病気を治す漢方医学。
- 沢庵の重しに茶袋(たくあんのおもしにちゃぶくろ)
- 沼に杭(ぬまにくい)
どれを見ても手応えがない様子が伝わってきますね。
「暖簾に腕押し」と「柳に風」の違い
「柳に風(やなぎにかぜ)」も似通った感じですが、下記のように違う点があるので使い方には注意が必要です。
「柳に風」の意味
「柳に風」とは、無理に言い返したり逆らったりしないで、穏やかに巧みに受け流すことを意味します。「柳に風と受け流す」とも言います。
「柳に風」の使い方
- あの店員はお客さんが文句を言っても柳に風でにこにこしている。
- あんな人は相手にしないで、柳に風とあしらっておけばいい。
- 夫には、悪口を言われても柳に風と受け流す強さがある。
風がふくままになびく柳のように、人に逆らわないというイメージですね。
「暖簾に腕押し」との相違点
「暖簾に腕押し」は「手応えがなくてがっかりした」「無駄なことだった」と残念な気持ちに使われるのに対し、「柳に風」は「まともに反応せずうまくよけた」「物慣れた賢い対応」「さらりとかわした」とほめる気持ちがあらわされています。
「暖簾に腕押し」の英語表現
- It’s like beating the air.(空気をたたくようだ)
- All is lost that is given to a fool.(愚かな人に与えられるものは全て無駄になる)
- He catches the wind with a net.(彼は網で風をとらえる)
他にも、scoop water with a sieve(ふるいで水をくむ)、bolt the door with a boiled carrot(ゆでたにんじんで戸締りをする)など、想像しただけでため息が出るような表現が並んでいます。
ちなみに「柳に風」はNo reply is best(応答しないのが一番いい)と表現されます。
まとめ
さて、ここでは「暖簾に腕押し」の意味や使い方についてご紹介しましたが、いかがでしたか?「暖簾に腕押し」には人を「ほめる」気持ちは含まれていないので、使い方には注意しましょう。