「待ちわびる」とは?
「待ちわびる」は、「待ち侘びる」とも書きます。「来ることが期待されるものがなかなか来ず、不安になったり気をもんだりする」ことを意味する言葉です。
単純に何かを「待つ」のではなく、予定を過ぎても来ないものをやきもきしながら待つ、というニュアンスが重要です。
古語「まちわぶ」
「待ち侘びる」という言葉は、古語「待ち侘ぶ(まちわぶ)」に由来します。「待ち侘ぶ」は、「待ちくたびれる」「待ちあぐむ」という意味を持つ、上一段活用の動詞です。
(伊勢物語)
現代文にすると「三年もの間、あなたの帰りを待ち侘びて暮らしてきました。でもまさに今夜、私は初めての枕を交わすのです」という意味です。
新枕とは、男女が初めて夜を共にすること。当時の女性は、夫が他国に赴いて3年経過し、かつ子どもがいないときには再婚することができました。
物語の中で、宮仕えの夫を3年待った妻が、さすがに待ちかねて他の男と結婚を約束します。まさに、その夜に帰ってきた夫に送った歌が、上の「あらたまの~」です。
「待ちわびる」の使い方
「待ちわびる」という言葉を使った例文をいくつか紹介します。ただ「待つ」のではなく、なかなか来ないものに対して多少焦れながら待つ様子がうかがえるでしょう。
例文
- 北国の人々は、雪に閉ざされた日々の中、短い春を待ちわびている。
- 故郷では、年老いた母親が息子の帰りを待ちわびていた。
- 全国大会決勝での屈辱的な大敗、そのリベンジを果たせる日を待ちわびていた。
「待ちわびる」の類義語
「待ちわびる」という言葉の類義語を紹介します。「待ちわびる」とは少しニュアンスが違う言葉もあるので、相違点を押さえておくことも重要です。
「待ち望む」
「待ち望む」とは、「期待して待つ」「心待ちにする」という意味の言葉です。「来るか来ないかやきもきする」というニュアンスを含む「待ちわびる」よりも、少しポジティブな印象を受けます。
【例文】
- 彼女は、留学した恋人との再会を待ち望んでいた。
- 多くのファンが待ち望んだライバル対決が、この大舞台で実現する。
「待ち焦がれる」
「待ち焦がれる(まちこがれる)」とは、「強く待ち望むこと」「一心に待つこと」を意味する言葉です。
今か今かとそわそわしている様子で、上述の「待ち望む」よりも強いニュアンスを感じさせるフレーズです。待っている対象が来ないかもしれない、という不安はそれほど感じさせないでしょう。
【例文】
- 息子の帰省を待ち焦がれる母親の心情にも気づかず、彼は夏休みを満喫していた。
- 小学校の入学式を待ち焦がれる娘は、毎日嬉しそうにランドセルを背負っている。
「待ち遠しい」
「待ち遠しい」は、「待っている対象がなかなか来ず、早く来てほしいと願っているさま」を意味します。
「対象がなかなか来ない」と言っても、その対象はどちらかと言えば「予定された未来」です。「来ないかもしれない」という不安は感じられません。
【例文】
- 親戚が集まるお正月が待ち遠しくて仕方がない。
- 修学旅行の日を待ち遠しく思う。
「待ちあぐむ」
「待ちあぐむ」は「うんざりするほど長く待つ」という意味の言い回しで、「待ち倦む」とも書きます。「倦む」は「あぐむ」と読みますが、同じ表記で「うむ」とも読む漢字です。
「倦む(あぐむ)」は、「ある事を継続してもよい結果が出ず、どうしたらよいか困ること。いやになること」を意味します。
【例文】
- 親友からの便りを待ちあぐねている。
- 合格発表を見に行った息子からの連絡を待ちあぐねる。