「横紙破り」とは?
「横紙破り」(よこがみやぶり)とは、物事を自分の思うがままに無理やり押し通すこと、また、そのような性格を表す言葉です。理屈に合わないことや慣例に反したことでも構わずに推し進めるニュアンスを含みます。
「横紙破り」の由来
「横紙破り」を字面の通りに解釈すると、「紙を横に破ること」となります。この場合の「紙」は「和紙」のことで、漉き目(すきめ:和紙の繊維)が縦に通っているのが特徴です。
和紙は縦方向には破きやすいですが、横向きに破るには力を込めて繊維を断ち切る必要があります。繊維の向きに逆らって強引に紙を破るさまを、物事を強引に進める様子になぞらえて、「横紙破り」という語句ができたのです。
「横紙破り」の使い方
「横紙破り」は現代では耳にする機会の少ない言葉です。見聞きするとしたら、過去を舞台にした時代小説や演劇においてかも知れません。相手や第三者を非難したり、陰口を言ったりする使い方が主です。
強引
自説を曲げずに強引にやり通す人の様子を形容するのに「横紙破り」が使うことができます。多数の人の意見や反対を無視してまで、やり通す様子が伺えますね。
【例文】新型肺炎で自粛ムードのためか、多くの人から「イベント開催は横紙破りだ」とお叱りを受けた。
わがまま
何においても自分を押し通すわがままな性格を表すのにも、「横紙破り」が用いられます。周囲の都合を考えずに、自分勝手な振る舞いが目に余る様子を表す表現です。
【例文】用事があるから優先させろだなんて、横紙破りも甚だしいよ。
非常識
常識を外れる行動をする人についても「横紙破り」という言い回しが当てはまります。慣例や規範を守る意識が薄いだけでなく、法律違反を承知してまでマイルールを通す人も含まれます。
【例文】近所のAさんは、駐禁のスペースに平気で車を停めている横紙破りな人だ。
頑固
新しい価値観を受け入れられずに、自説に固執している人も「横紙破り」と言えます。説得してもろくに耳を貸さず、自説にこだわる姿勢に周囲から呆れられている様子を表現できます。
【例文】自分のやり方にこだわる横紙破りなワンマン社長のせいで、若い人から転職していくそうだよ。
「横紙破り」の類語
横車を押す
「横車を押す」(よこぐるまをおす・単に「横車」とも)とは、道理に合わないことを無理強いさせることを言います。無理を通す所が「横紙破り」と似ていますね。
本来は前後にしか動かない車を、横向きに押して無理やり動かそうとする様子から由来しています。
【例文】横車を押して、決定事項を社長の都合の良いように変えさせた。
押し付けがましい
「押し付けがましい」(おしつけがましい)とは、相手の意思や動向に構わず、自分の考えや行動を相手に押し付けることです。「がましい」とは、名詞や副詞、動詞の連用形に付く形容詞で「そのような状態である」といった意味合いです。
「押し付けがましい」は、やった本人は相手のためにと考えても、相手の方はありがた迷惑としか受け取れない場合があります。いわゆる、おせっかいな行動です。
【例文】義母は押し付けがましく、自作の惣菜や買いだめしたトイレットペーパーなどを送り付けてくる。
ゴリ押し・ごり押し
「ゴリ押し・ごり押し」(ごりおし)の意味は、道理にかなっていないことを理解していながら、無理を押し通すことです。「横紙破り」の場合は、本人が無理強いしているのを自覚しているかは不明ですから、その点は違うと言えます。
由来は諸説ありますが、有力な説は川魚の「ゴリ」の獲り方にあるようです。ゴリは川底の石の下に潜っているので、藁を押し付け川底をさらうようにして網の中に追い込んで漁をしました。
このような無理やり追い込むような漁の仕方を「ゴリ押し漁」と呼んだことから来ているということです。
近年ではゲームのプレイの仕方(戦略を立てずに、装備を揃えるなどして力ずくでゲームを進行させる)にも使われてます。
【例文】
- 実力がなくても、取引先のご子息ということで責任者にゴリ押ししたみたいだよ。
- とにかく経験値のレベル上げをして、ゴリ押しでゲームをクリアした。