「いささか」は古めかしい言葉?
「いささか」という言葉にはちょっと古風な響きがあります。「いささか~だ」などと聞くと、どこか改まった印象を受けるのではないでしょうか。もちろん現代でもしっかり通用しますが、この言葉にはどんな意味や歴史があるのでしょう? 以下、「いささか」について詳しく解説していきます。
「いささか」の意味
「いささか」は複数の意味を持つ言葉ですが、大きく分けると、まず1つ目に「数や量、程度が少ないさま。少し。わずか」という意味があります。現在、一般に使われることが多いのは、この1つ目の意味ではないかと思います。
次に、「かりそめ。ついちょっと」という意味があります。「かりそめ」とは「一時的なこと。そのとき限りであること」を指します。1つ目の意味と違って、こちらは時間的な尺度を表しています。
そして3つ目、「いささかも~でない」という具合に否定形をとって、「少しも・まったく・ちっとも~でない」という強調表現として用いられます。
「いささか」の漢字
「いささか」を漢字表記すると「些か」もしくは「聊か」となります。それぞれの漢字にどういった意味があるかご説明しましょう。
「些か」の「些」は、訓読みでは「いささ(か)」の他に「すこ(し)」とも読むことができます。音読みの場合は「サ」(稀に「シャ」)です。
「些」という漢字には「わずか。すこし」といった意味があり、「些」を使った熟語には「数・量・程度がきわめてわずかであること」を指す「些細」「些少」「些末」などがあります。
一方、「いささか」のもう1つの漢字である「聊」は、訓読みでは「いささ(か)」の他に「たよ(る)」「たの(しむ)」、音読みでは「リョウ」と読みます。
この「聊」という漢字には、「些」と同様の「わずか。すこし」以外に、「頼る」「楽しむ」「耳鳴りがする」「願う」「おそれる」など、多くの意味が含まれています。「無聊を慰める」などというときは、「聊(楽しみ)」が「無」いから退屈で心が心が晴れないのですね。
古語としての「いささか」
「いささか」は、万葉仮名(飛鳥・奈良時代に漢字の音を当てて作られた日本語表記)でも記されている古語です。『万葉集』の第19巻4201首に、判官久米朝臣廣縄の名で「いささかに思ひて来しを多胡の浦に咲ける藤見て一夜経ぬべし」という歌が採られています。万葉仮名の「いささか」は「伊佐左可尓」と書きます。
古語としての「いささか」の意味は現代の用法とほとんど一緒です。
「いささか」の例文
ここで、上記のような意味を持つ「いささか」を使った例文を挙げてみます。
- 計画通り進むのか、いささか不安を感じる。
この例文では「程度が少ない」という意味合いで「いささか」が使われています。「決定的とはいわないまでもなんとなく不安だ」という感じですね。
- 急な変更だったが、いささかも動じなかった。
なお、「いささか」のもうひとつの意味である「かりそめ。ついちょっと」については、現代ではほとんど用いられませんので割愛します。
「いささか」の類義語
「数や量、程度が少ないさま。少し。わずか」という意味での「いささか」の類義語はあまりに多くて書ききれないぐらいです。一部を挙げると「申し訳程度」「微々たる」「少々」「微量」など。「いささか不安だ」という場合だと、「一抹の不安がよぎる」「いくばくかの不安を感じる」の「一抹」や「いくばく(幾許)」も類義語となります。
「いささか」のまとめ
いかがでしたか?「いささか」についてご紹介しました。長い歴史を持ち、古風な表現ではありますが、現代でも使われる機会はあり、日常生活で大いに活用できる言葉です。