「たおやめ」とは
「たおやめ」を漢字で書くと「手弱女」となります。古語の「たをやめ」に由来し、「たおやかな女性」「優美な女性」「優しい女性」という意味を持つ言葉です。「たわやめ」とも言います。
「たおやか」とは、姿・動作などが美しくしなやかなさまを表す言葉です。基本的には女性の美しさを形容する言葉なので、男性にはほとんど使われません。
また、「たおやめ」という言葉には、「浮かれ女」「あそびめ」という意味もあります。いわゆる「遊女」「春をひさぐ女性」という意味ですが、現在ではこちらの意味で使われることは少ないです。
「たおやめ」の使い方
前述のとおり、「たおやめ」とは「女性の優美さ」を褒める表現です。語源としては「撓む(たわむ)」の変化で「手弱女」は当て字である、という説もありますが、一般的には「手弱女」の表記が用いられます。
字面だけを見た場合、あるいは「女性は弱くはかないもの」という価値観を嫌う女性に対して用いた場合、気分を害される恐れもある言葉です。使用する際には十分に注意しましょう。
- 彼女は「大和撫子(やまとなでしこ)」や「たおやめ」というような古風な表現の似合う、楚々(そそ)とした女性だ。
- 能登地方には「手弱女桜」という桜がある。女性的で美しい花だよ。
「たおやめ」の対義語
「たおやめ」の対義語は、「ますらお」です。漢字では「益荒男」「丈夫」「大丈夫」などと表記されます。
代表的な意味は以下の3つ、うち「たおやめ」の対義語となるのは1の意味で使われる場合です。
- 立派な男。勇気のある強い男
- 武人、兵士
- 狩人、猟師
「ますらお」の使い方
「たおやめ」と同じく、「ますらお」も現代ではほぼ使われることのない言葉です。文学作品の中に見られる「ますらお」という言葉を紹介しておきましょう。
『即興詩人』の例文では「立派な男」、『万葉集』の例文では「兵士」という意味で「ますらお」が使用されています。
「ますらおぶり」
「ますらおぶり(益荒男振り、丈夫風)」とは、男性的でおおらかな歌風(和歌の詠み方)を指す言葉です。江戸時代の国学者、賀茂真淵(かものまぶち)が和歌の理想形として捉えていました。
賀茂真淵は、『万葉集』の和歌に「ますらおぶり」を見出し、それこそが和歌の本道、戻るべき原点であると説いています。
「たおやめぶり」
「たおやめぶり(手弱女振り)」とは、古今集以後の勅撰集に広くみられる和歌の詠みぶりです。女性的で優美・繊細な歌風を表します。
賀茂真淵が使いだしたとされている言葉で、万葉集の男性的な歌風「ますらおぶり」と対比した表現です。賀茂真淵自身は、万葉集を理想としていたため、「たおやめぶり」は、やや非難をこめたニュアンスで用いています。
なお、賀茂真淵の弟子である本居宣長(もとおりのりなが)は、源氏物語を高く評価し、「たおやめぶり」も日本文化の重要な流れである、と説いています。