「ェ」とは
SNSなどで、「台風ェ」「疲れたェ」のように、名詞などの後に続いているカタカナ小文字の「ェ」は誤字ではありません。
この「ェ」は、言ってみれば、「嫌だーー!」「まじか……」のように感情を強調する時に用いる長音記号(ーや〜)、感嘆符(!や?)、三点リーダ(…)のようなイメージです。
つまり、ある物事に対して感情が溢れた状態を表す記号として用いられます。このネットスラングが表す感情は、愛や悲しみ、怒り、呆れ、失望など様々です。
「ェ」をどう発音するか?
「ェ」は記号のように用いられるため、エ段で終わらない言葉の後にも続けることができます。「おまえ」→「おまえェ」という用法だけではなく、「こいつ」→「こいつェ」という使い方もあるということですね。
「ェ」はネット用語なので口に出して読むということは稀です。しかし、敢えて発音するならば、エ段で終わる言葉の場合は長音記号と同じように発音するでしょう。「おまえェ」ならば<おまえー>という具合です。
一方で、エ段で終わらない言葉の場合は感嘆符や三点リーダと同じように発音せず、「こいつェ」の場合は<こいつ>となると考えられます。
「ェ」の使い方
名詞の後に付く
「ェ」の用法で多く見られるのは、名詞の後に続ける使い方です。
【例文】
- (推しのアイドルの写真を見て)「○○ちゃんェ」
- (急な仕事を言いつけられて)「サビ残ェ」
- 「また買い占めか。転売厨ェ」
形容詞などの後に付く
「ェ」は名詞以外の形容詞などの後に付いて用いられることもあります。
【例文】
- (約束をドタキャンされて)「酷いェ」
- (友達がバイトのシフトを代わってくれて)「まじ感謝ェ」
- 「走っても間に合わないェ」
ところで、形容詞の末尾の「い」を口語的に「え」に置き換えることがありますね。「美味い」→「美味え」、「遅い」→「遅え」のようなケースです。
これに「ェ」を付けるときは「美味えェ」「遅えェ」と書かれることもありますし、「美味ェ」「遅ェ」と表記されることもあります。この場合の発音は、どちらも<うめえー>や<おせえー>となるでしょう。
他の記号と組み合わせる
「ェ」の後に、さらに三点リーダ(…)や中黒3つ(・・・)などが続く場合もあります。後述する元ネタを考慮すれば、三点リーダや中黒3つが後ろに付く形が本来の用法だと言えるでしょう。
【例文】
- (度重なる官僚の不祥事のニュースを見て)「役人ェ…」
- (店員さんに親切にしてもらって)「神対応ェ・・・」
単体で用いる
さらに、何かのリアクションとして、前に置く名刺などがない状態で「ェ」や「ェ…」、「ェ・・・」などだけが用いられることもあります。
【例文】
- 「どうしたの?約束は明日でしょ?」「ェ」
- 「台風のためイベント中止だってよ」「ェ…」
- 「納期前だから休日出勤お願いね」「ェ・・・」
「ェ」の元ネタ
元ネタは『NARUTO』
「ェ」の元ネタとなったのは、漫画作品『NARUTO ーナルトー』に登場する香燐<かりん>という女性キャラクタのセリフです。香燐は主人公のナルトやサスケの敵側の人間でしたが、のちにナルト達の仲間になりました。
香燐は敵であった時からサスケに好意を持っており、「サスケェ・・・」というセリフをよく使っていたのです。普通に「サスケ」と呼ぶよりも含みがあるように感じられますね。
『NARUTO ーナルトー』は『週刊少年ジャンプ』に1999〜2014年に連載されていた、岸本斉史による漫画作品です。忍者たちの活躍を描いたアクション作品で、日本だけでなく、忍者が好まれる海外でも人気を博しています。
掲示板で用いられ始めた「○○○ェ・・・」
やがて、掲示板の2ちゃんねる(現在の5ch)において、この「サスケェ・・・」の「ェ・・・」の部分が他の名詞などに付いて「○○○ェ・・・」のかたちで用いられるようになりました。
この使い方が他のSNSにも広まり、「ェ」や「ェ・・・」「ェ…」単体で用いられるまでに派生したのです。