「宥める」の意味
「宥める」は「なだめる」と読みます。以下二つの意味があります。
- 怒りや不満をやわらげて気持ちを穏やかにする。
- 罪あるいは罪人に対して、寛大な取り扱いをする。
現代では、もっぱら1の意味で用いられています。2の意味を含んだ文脈は、古典などで登場することもありますが、日常生活で見聞きすることはほとんどないでしょう。
また、「宥める」は、古典日本語「なだむ」から派生した言葉です。「なだむ」には、「気持ちを静める」、「寛大に扱う」、「とりなす、調停する」という意味があります。
「宥」の字義
「宥」は、音読みで「ユウ」、訓読みで「ゆる(す)、なだ(める)」と読み、以下の意味があります。
- なだめる。
- 大目に見て許す。
2の意味で使われている言葉には、「宥恕(ゆうじょ)」「寛宥(かんゆう)」などが挙げられます。これらの言葉はいずれも「寛大な心で罪を許すこと」を表します。
「宥める」の使い方
「怒りや不満を和らげる」の意味での使い方
「宥める」を使うときは、適切なシーンであるかを見極めることが大切です。まず、状況として「怒りや不満などで感情が高ぶっている人がいる」こと。そして、その人を「落ち着かせようとしている人がいる」ことが前提です。
「まぁまぁ、ここは落ち着いて考えて…」や「気持ちは分かるけど、ここは一旦冷静になって…」といったような、事を荒立てないようにとりなしている様子に対して「宥める」を用います。
【使用例】
- チームワークを大切にする上司は、後輩のミスが許せないと怒る同僚を宥めた。
- お菓子を欲しがる子どもを宥めて、急いで買い物を済ませる。
「罪や罪人に対して寛大な取り扱いをする」の意味での使い方
「宥める」は、古典などにおいては「罪あるいは罪人に対して寛大な取り扱いをする」の意で用いられています。
たとえば、「死罪を宥めて追放す」や「なだむることなく、厳しう行なへ(訳:手加減せずに、厳格に行いなさい)」のように使われます。
「宥める」の類語
慰撫
「慰撫(いぶ)」とは、「人の怒りや不安をなだめ、いたわること」を意味する言葉です。「慰」という字には「なぐさめる。いたわる」、「撫」という字には「なでる。しずめる。おさえる」という意味がそれぞれあります。
【使用例】
優しい音楽は、傷ついた私の心を慰撫する。
鎮静
「鎮静(ちんせい)」とは、以下の意味を持つ言葉です。
- 騒ぎや高ぶった気分などを、しずめ落ち着かせること。
- 薬物などによって神経の興奮をしずめること。
このうち1の意味が、「宥める」に類すると言えます。しかし、「宥める」が人に対して用いられるのに対し、「鎮静」は暴動や物価などに対しても使うことができる表現です。
【使用例】
市民たちによるデモ活動は、警察の介入により鎮静した。
「宥める」の反対語
けしかける
「けしかける」とは、以下の意味を持つ言葉です。
- 勢いづけて相手を攻撃させる。
- 相手をおだてあげて自分の思うとおりのことをさせる。そそのかす。
【使用例】
成長のチャンスだからと僕をけしかけて、先輩は大量の仕事を振ってきた。
叱る
「叱る(しかる)」とは、「相手のよくない言動をとがめて、強い態度で責める」ことです。「叱る」には「目下の人を良い方向に導く」というニュアンスが含まれており、あくまで「目下の人」に対してのみ用います。
【使用例】
先生があなたを叱るのには、ちゃんとした理由があります。