「毛頭ない」とは
ヘアケアの話題で必ずと言っていいほど登場する「毛根」。これは髪の毛の根元のことですね。毛根の反対側のことは「毛先」と言いますが、「毛先ほども・ほんの少しも」を表す言葉が「毛頭(もうとう)」です。
「毛頭」は「毛頭ない」のように後ろに打ち消しの語を置いて、打ち消しを強調する副詞として使います。よって、「毛頭ない」とは、「毛先ほども無い・まったく無い」ことです。
「疑う気持ちなど毛頭ない」ならば、「疑う気持ちなどほんの少しもない」という意味になります。
「毛頭」とは
「毛頭」には、「毛頭ない」のように副詞として打ち消しを強調する以外にも、名詞としての働きがあります。現在では使われていませんが、古語では、「毛の生えた頭」や「有髪の侍童・稚児(ちご)・喝食(かっしき)」という意味があります。
「毛頭ない」の使い方
「毛頭ない」は、多くの場合、意思や気持ちがないことを表します。「忙しくて時間が毛頭ない」とは言いません。
【使用例】
- この仕事を途中で投げ出す気は毛頭なかった。
- 会社を辞める意志など毛頭ない。
- あなたをだますつもりは毛頭ないよ。
- 彼女を傷つけるつもりは毛頭なかった。
「毛頭ない」の類語
「爪の先ほどもない」「露(つゆ)ほどもない」「欠片(かけら)もない」など、ほんの少しもないことを表す言葉は数多くあります。
「寸毫」
「寸」はごくわずかなこと、「毫」は細い毛という意味から派生して、極めてわずかなことを表します。これらの似た意味の語を重ねてできている「寸毫(すんごう)」は、「極めてわずか・ごく少し」という意味です。
「悪意は寸毫もない」「寸毫も決意は揺るがない」と後ろに打ち消しの語を伴う用法は、「毛頭ない」に近いですね。しかし、「寸毫」には、「寸毫の間に決着した」と打ち消しを伴わない使い方もある点には注意しましょう。
「更々ない」
「更々(さらさら)」にはいくつか意味がありますが、「更々ない」という場合は、少しも・決してという意味です。「更々ない」は少しも無い・決して無いという意味で、「諦める気は更々ない」のように使います。
「万に一つもない」
「万に一つもない」は、万ある可能性のうちの一つもないという意味です。「万」は非常に大きな数を指していますが、たとえ文字通りの意味と捉えたとしても、確率的に1/10000も無いということですね。「助かる可能性は万に一つもない」のように用いられます。
「微塵もない」
「微塵(みじん)」は、打ち消しを伴って、量や程度がごくわずかなことをもないことを表します。よって、「微塵もない」は、ほんの少しもないという意味です。
「微塵の悪意もない」のように気持ちや意志に対して使うだけでなく、「遮る物は微塵もない」のように物理的なものにも用いられます。
なお、「木端微塵(こっぱみじん)」、「微塵切り(みじんぎり)」という場合の「微塵」は、物が壊れてとても細くなるという意味です。
「毛」にまつわることわざ
体の部分を使ったことわざや慣用句は数多くありますが、「毛」に関することわざには次のような言葉があります。
「馬痩せて毛長し」
「馬痩せて毛流し(うまやせてけながし)」は、「貧すれば鈍する」と同じ意味を持つ言葉です。馬が痩せてくると、毛が伸びているわけではないのに毛が長く見えることから、人は貧乏になると頭が働かなくなるという喩えとして用いられます。
「九牛の一毛」
「九牛」は9頭の牛ではなく、たくさんの牛のこと。「九牛の一毛(きゅうぎゅうのいちもう)」は、多くの牛の中のたった一本の毛を表しています。多数の中にあるごくわずかな一部分、または、取るに足らないものを喩えており、「大海の一滴」と同義です。
「毛の無い猿」
「毛の無い猿」とは、体に毛が無いことが猿と人との違いであることに由来しています。人としての良心、人情が無い人という意味で、侮蔑的に用られます。
「毛を吹いて疵を求む」
「毛を吹いて疵を求む(けをふいてきずをもとむ)」とは、髪を吹いてかき分けてでも小さな疵を探し求めるという意味。他人の小さな欠点をわざわざ探すこと、または、他人の欠点を暴こうとして自分の欠点をさらけ出してしまうことの喩えです。
後者は、「薮蛇(やぶへび)」「薮をつついて蛇を出す」と同じ意味ですね。
「眉毛を読まれる」
「眉毛を読まれる」とは、相手に思っていることを見抜かれてしまうことの喩えとして使われる言葉です。眉の動きから表情を読むということではなく、相手に自分の眉毛の本数を数えられるがごとく心を読まれるということを表しています。