「据え膳」の意味
食事は毎日するものですが、自分で用意するのは面倒な時もあることと思います。毎日「据え膳」(すえぜん)だと気が楽ですが、一人暮らしの方や主婦(主夫)の方はなかなかそうもいかないのではないでしょうか。今回は「据え膳」の意味や、「据え膳」を使ったことわざをご紹介します。
まず「据え膳」とは「すぐ食べられるように食膳を調えて人の前に出すこと、またその膳」という意味があります。「食膳」は、食べ物や料理を乗せる台、逆に台に乗せた食べ物、どちらのことも指します。皆さんも食卓を準備する時に、「お膳を並べる」という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。
「据え膳食わぬは男の恥」
「据え膳食わぬは男の恥」の語源
「据え膳」を使ったことわざに、「据え膳食わぬは男の恥」というものがあります。これは「据え膳」を女性に喩えたものです。「女性から持ち掛けてきた情事に応えようとしないのは男の恥である」という意味です。
「据え膳食わぬは男の恥」という言葉は、人形浄瑠璃や歌舞伎狂言からきています。「夏祭浪花鑑」(なつまつりなにわかがみ)という演目があり、その中で「据え膳と河豚(ふぐ)汁を食わぬは男の内ではない」という台詞があるのです。「据え膳(女性)と毒のある河豚を食べる勇気がないなんて、男として情けない」ということです。
「据え膳食わぬは男の恥」なのか?
昔は「男性は外で働き、女性は食膳を調えたり子育てをして家を守る」という考え方が一般的でした。男性に決定権があり、女性は受け入れるのが当然というような関係です。
男女の恋愛についても男性が優位だったのではないでしょうか。そのため女性が少しでもその気を見せたら、男性はそれに応えなければ格好悪いという風潮だったのかもしれません。
しかし、現代では「据え膳食わぬは男の恥」という考え方は少なくなってきているようです。女性が社会進出するようになり、男女平等が謳われるようになりました。「据え膳」を食うかどうかは、相手との関係性や状況にもよるでしょう。いずれにしても、お互いの意思を確認し合うことが一番大切なのではないでしょうか。
「上げ膳据え膳」
皆さんは実家にに帰省した時、「上げ膳据え膳」だったことはないでしょうか。いつもは自炊や外食で済ませているけれど、実家に帰ると家族が料理をしてくれて、改めて感謝の気持ちが湧いてくることと思います。
このように「上げ膳据え膳」とは、他人が食事の用意や後片付けをしてくれるということから、「自分は何もしないで家の中で大事にされて暮らすこと」という意味があります。
「膳」を上げたり下げたりするという様子から、「上げ膳下げ膳」と間違えてしまうことが多いです。後片付けのことを「食器を下げる」ということもあるからでしょう。正しくは「上げ膳据え膳」です。「上げ膳」が後片付けで「据え膳」が準備と覚えておくとわかりやすいのではないでしょうか。
「据え膳」の使い方
「据え膳」の意味やことわざをご紹介してきましたが、おわかりいただけたでしょうか。ここではご紹介したことわざも含めた「据え膳」を使った例文を見てみましょう。
・彼が据え膳に見向きもしないなんて驚いた。
・据え膳食わぬは男の恥かもしれないが、僕にはそんな勇気はない。
・夫は実家で上げ膳据え膳だったので、結婚してからも家事は一切しない。
・今度の旅行では上げ膳据え膳な生活を満喫しよう。
いかがでしたか。「据え膳」そのものは食事や食卓を意味しますが、「据え膳食わぬは男の恥」というような男女の関係を表すこともあります。
「据え膳」のまとめ
「据え膳」のように誰かに何もかも任せるのは、自分にとっては楽なことですよね。しかし、自分が「据え膳」を用意する側になるとまた考え方が変わってくるのではないでしょうか。してもらって当たり前ではなく、感謝の気持ちを持つことで「据え膳」が特別なことに感じるかもしれません。