「顧みる」とは?
「顧みる」には、大きくわけて次の三つの意味があります。
- 過ぎ去ったことを思い起こし、考える。
- 心に留めて考え、気にかける。
- (動作として)うしろを振り返って見る。
なお、「戻って見る」という意味も持ちますが、現在では使われていないため後述の詳細説明からは割愛します。
「顧みる」の使い方
「顧みる」は、複数の意味がありますので使い分けが重要です。三つの意味ごと使い方と文例を挙げていきましょう。過去を回想する、心に留めて気にかける、という二つの意味は、さまざまな場面でよく用いられます。
残る一つの、実際にうしろを振り返る、という意味での「顧みる」は、日常会話ではまず使われることがないでしょう。
回想を意味する「顧みる」の使い方
「顧みる」は、過去に体験した物事や出会った人々との出来事に思いをはせるという心の動きですが、なにげなくそうするというよりも、その必要を感じてこその「顧みる」です。
とはいえ、回想することによって、懐かしさや楽しさ、あるいは怒りなど、どのような感情がわいてくるかは別のこと。過去に思いを馳せ、考えるというところまでを示すのが、「顧みる」であることを意識して使いましょう。
また、なぜ「顧みる」という行動に至ったのか、その結果どんなことを思ったのか、この二つを補うとよりよいでしょう。
「顧みる」対象は、過去の自分自身やその体験、一般的な出来事など、あらゆることが含まれます。
文例
(A男)
昨日は還暦を迎え、これまでの人生を顧みたんだ。失敗も多かったけれど、やりたいことに挑戦できた悔いない日々だとあらためて思ったよ。
(B子)
令和を迎えて平成の時代を顧みると、規模の大きな天災、人災が思い出されるわ。令和の時代は、平穏な日々が続くようお祈りしよう。
気にかける「顧みる」の使い方
「顧みる」は、人(個人、集団)のことを気に留め、心配したり心にかけたりすることの意味も持ちます。こちらも、ある思いを抱いて気にかけること自体を指す言葉であることを理解して使いましょう。
映画やドラマで、会社人間の夫に、妻がこんなセリフを叫ぶ場面を観たことがあるのではないでしょうか。「あなたは、いつだって家庭のことを顧みたことなんてなかったじゃない!」現代日本では、妻から夫への台詞が逆になっているかもしれませんね。
対象は、人であることが多いとはいえ、組織そのものなども含まれます。
「文例」
(C子)
ずっと夢だったニューヨーク支店への転勤がかなったのだけれど、日本にいる彼氏の気持ちを顧みるゆとりがなくなって、結局別れてしまったわ。
(D男)
野球部顧問だった木村先生は、学校を定年されても、野球部のことを顧みて助言や差し入れをしてくれるんだ。
振り返る「顧みる」の使い方
単純に動作として後ろを振り返ることを意味する「顧みる」。少々硬いニュアンスを持つため、会話ではほとんど登場しません。
なんとなく振り返る、という場面ではなく、なんらかの思いをこめて振り返るときに用いるのが適切でしょう。
【文例】別れた恋人が暮らす家の前を通りかかった彼女は、しばらく歩いたのち、ためらいながらその家の窓を顧みた。
「顧みる」の類語
「省みる」
「省みる」は、「顧みる」と同語源、同音の言葉ですが、意味や使い方においては異なる部分もあります。混同しやすいため、違いを理解しておくとよいでしょう。
「省みる」の意味は、自分のなしたことを、振り返り考え、内省することです。追想、追憶することも指しますので、この点は「顧みる」の類語といえますが、大きな違いは、「反省」の意が含まれる点です。
また、「顧みる」の対象はあらゆるものを含みますが、「省みる」の対象は自分自身のみであることに注意しましょう。
【文例】自分の失敗を省みることは辛い作業だが、これなしにはその失敗を成功へつなげることは不可能だ。
「回顧」
「回顧」とは、過去を振り返ることです。芸術家の過去の作品をまとめて紹介する展覧会を「回顧展」と表現しますね。
実際にうしろを振り返る、という意味もありますが、やはり現代ではほとんど使われることがありません。
【文例】就活で苦労した当時を回顧して、学生たちに経験やアドバイスを伝えた。