「拘る」とは?
読みと字
「拘る」の読みは、「こだわ-る」です。「あの人はいつもルールにこだわる」などの表現に見られる「こだわる」ですね。「拘」は常用漢字ではあるものの、「拘る」と書く時にはひらがなで書かれることのほうが多いでしょう。
「拘」(コウ)の字は、「手」と「句」(ひっかけて止める)から成り、「手でさえぎり止める」「とらえる」「かかわる」などの意味があります。「拘束」などの熟語がわかりやすい用例ですね。
意味
「拘る」の意味は、以下の通りです。
- 些細(ささい)なことにとらわれる。拘泥(こうでい)する。
- 些細な点にまで気を配る。思い入れする。
- さわる。さしさわる。さまたげとなる。
- 故障を言い立てる。なんくせをつける。
このうち、日常的に使用されているのは下線を引いた1番目と2番目の意味にほぼ限られておりますので、この記事ではこれらの意味に絞って使い方の解説を行います。
「拘る」の使い方①:些細なことにとらわれる
「些細なことにとらわれる」という意味の「拘る」は、基本的にはあまり良い意味では使われません。客観的に見て小さなこと、取るに足らないことを気にする、執着して融通がきかない人のさまを指して使います。
なお、「拘らない」と否定形にすることで、小さなことにとらわれることがない、という意味で使用することもできます。ただしこの場合、執着すべき部分にも執着しない「無頓着」という印象を与えることもあります。
例文
- あの人はいつもルールに拘る。厳格なのはいいが、もう少し融通を利かせてもらいたいものだ。
- 勝ち負けに拘るのはいいことだが、君はまだ若いのだから、勝負を楽しんだり、自己を表現するすべを学んだりすることも大切だよ。
- 僕は食事には拘らない。腹に入ればファストフードでもフランス料理のフルコースでも構わないよ。
「拘る」の使い方②:些細な点にまで気を配る
「些細な点にまで気を配る」という意味の「拘る」は、小さなことも妥協せず、よりよい結果・状態を追求している人のさまを表し、基本的にはポジティブな意味で使われます。
「些細な点」に注目・注力している点は使い方①のネガティブな意味と同様なのですが、こちらでは些細な点に心を砕くことがプラスの意味として評価されています。
使い方①と使い方②のあいだに明確な線引きはありません。何かに「拘る」ことを良い意味でとるか悪い意味でとるかは、その場の空気や文脈にも左右されます。
例文
- 飲む酒の銘柄くらい拘らせてくれないか。私の唯一と言っていい楽しみなんだ。
- そのくらいの整備で良いと皆は言ったが、彼は万が一の可能性に拘ってぎりぎりまでその機械を調整した。
- 原材料から製造過程まで、しっかりと拘ったパンだ。
「拘る」の英語表現
「拘る」を英語で表現する場合には、以下のような単語・表現を用いましょう。
- stick(固執する、ねばりつく)
- strain(張り詰める、緊張する)
- dwell on ~(くよくよ考える)
- particular(好みがうるさい、細かい)
これらの英語の場合でも基本的には「小さなことにとらわれる」というネガティブな意味に受け取られがちですが、文脈によって「粘り強く努力する」「全力を尽くす」という前向きな意味で使うこともできます。
例文
- He sticks to victory or defeat.(彼は勝ち負けに拘る)
- She strained every nerve to win.(彼女は勝つためにあらゆる神経を使った[=拘った])
- She is particular about her dress.(彼女は着るものに拘る)