「スクラップアンドビルド」とは
「スクラップアンドビルド」は主に企業などの組織で用いられる方法(手段)です。辞書的な意味は、次の二つに大別できます。
- 企業が合理的な経営手法としてとり行うもの。老朽化のため効率の低くなった設備を廃止し、効率の高い設備に更新すること。
- 組織が膨張するのを防ぐために行われるもの。組織を新設するときに、同じような役割をもった旧組織を廃止すること。
このように、「スクラップアンドビルド」は英語の”scrap and build”(廃棄と建築という意味)が示す通り、何かを刷新するために古いものを破棄するという意味があるのです。
「スクラップアンドビルド」の語源
もともと「スクラップアンドビルド」は1955年以降の石炭産業の合理化に際して使われた言葉です。それまで使っていた設備が古くなり効率が悪くなったため、これを廃棄し(スクラップ)、高性能の新設備に置き換え(ビルド)たのです。
「スクラップアンドビルド」は個々の企業でも行われ得るものですが、本来的には系列会社や国家が関わるような、大規模な取り替えが行われる場合に使われます。より規模が小さい場合には「設備の更新」(refurbishplant)と言った方が一般的です。
例えば、高度経済成長期に繊維産業が発展途上国の追上げを受け苦境に陥った際、業界が団結して政府の支援を得、1967年の特定繊維工業構造改善臨時措置法制定につながったというのが、日本における「スクラップアンドビルド」の例だと言えます。
「スクラップアンドビルド方式」とは
「スクラップアンドビルド」のほかに、「スクラップアンドビルド方式」という言葉も使われています。この二つは何が違うのでしょうか。
上で見たように、「スクラップアンドビルド」は、単独の企業によってのみ行われるものではなく、業界全体や政府まで巻き込んで大規模に行われるという印象があります。
一方「スクラップアンドビルド方式」は、もう少しマイルドなニュアンスになると言えます。中小の企業や組織で、また個人的な部分で「スクラップアンドビルド」的なことを行うという場合には、「〜方式」をつけることが多いようです。
とはいえ、この二つはそれほど厳密な区別はないと考えられます。たとえば、庵野秀明監督の映画『シン・ゴジラ』に、「スクラップアンドビルドでこの国はのし上がってきた」という台詞がありました。これはほぼ「破壊と再構築」と同じ意味でしょう。
用例
- 日本経済は戦後、焼け野原の状況から奇跡と言っていいほどの復活を遂げた。日本という国の現代そのものが、スクラップアンドビルドの歴史だと言っても良いだろう。
- 組織の肥大化は避けられません。だからスクラップアンドビルドという考え方が必要なのです。
- スクラップアンドビルド方式と言えば聞こえがいいが、めちゃくちゃにするだけしてあとは知らんぷりじゃないか。
小説『スクラップ・アンド・ビルド』
『スクラップ・アンド・ビルド』は羽田圭介による小説のタイトルです。これは祖父を介護する無職の青年を主人公にした純文学作品で、超高齢化社会に対する若者の行動が「スクラップ・アンド・ビルド」というタイトルに象徴されています。
本作は2015年に文藝春秋社より単行本が出版されました。また同年、第153回芥川賞を受賞しています。その後、文庫版が同社より2018年に出版されています。
著者の羽田氏は、芥川賞受賞後は執筆活動のみならず、バラエティ番組などにも積極的に出演しています。