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「いい質問ですね」とは
「いい質問ですね」は、ジャーナリスト池上彰さんが、ニュース解説番組で多用し、2010年度新語・流行語大賞トップテン入りした言葉です。特別な前振りやアクションがある、一発芸的なものではありません。
池上彰さんの「いい質問ですね」
池上さんは、新語・流行語大賞受賞にあたり、「いい質問ですね」と発言する時には二種類あるとコメントしています。
- 本題からずれていた話の流れを戻してくれる質問
- 本質を突いた質問で、認識を新たにさせてくれる質問
池上さんは、進行役として番組進行の役に立つ質問と、ジャーナリスト個人として知見を新たに出来る質問の二種類を指して、「いい質問」と呼んでいるようです。
「いい質問」①:指導者側にとっての「いい質問」
「いい質問ですね」は、池上さんが、番組で使うようになる前から、日常的に使われてきた言葉です。特に授業や研修など、ものを教える、あるいは、教わる場面でよく聞かれます。
「質問」とは、分からないことや知りたいことを相手に伝え、回答を求めることです。疑問を感じた内容が優れていることは、「いい質問」の要件です。
- 核心を突いた質問
- 内容を十分に理解しているから出てくる質問
- 着眼点がユニークな質問
【例】
先生:ヘンゼルとグレーテルが無事に家に帰ってきて、お父さんは泣いて喜びました。
生徒:お母さんが子供たちを捨てるのをお父さんは止めませんでしたが、子供たちに帰ってきてほしかったんですか?
先生:いい質問ですね。
「いい質問」②:指導者が投げかける「いい質問」
質問は、必ずしも指導される側が発するだけではありません。授業や研修、相談などの場で指導者側が質問を投げかけることもあります。
- 実験が途中で止まってるね。どうしたらいいと思う?
- そのやり方で効率が上がることは分かった。でも、現場の人の気持ちは考えた?
上の1、2のように誘導的な問いかけもあれば、下の3、4のように根本的なところを考えさせる質問もあります。相手に本質的な問いを投げかけることによって自分で考えさせるのです。
- それがあなたの本心ですか?
- 君は歌手になって音楽をやりたいのかな?有名になりたいのかな?
1〜4のどれも、自分で考えて答えを見つけるきっかけを与える「いい質問」です。ただし、指導やアドバイスを受ける目下の人間から、「いい質問ですね」と指導者側を評価することは、立場上、不適切ですから注意しましょう。
「いい質問ですね」の使われ方
池上さんは、肯定的に相手の質問を評価して、「いい質問ですね」を使っています。ですが、実際には、答えられない、または答えるのが難しい質問をされたときの時間稼ぎで、「いい質問ですね」と言っていることもあります。
【例】
先生:二つの言語が相互に理解不可能であれば、別の言語とされます。
生徒:日本国内でも方言によっては、字幕がつくほど理解できないんですが、なぜ同じ日本語なんですか?
先生:それは、いい質問ですね。
このタイプの、「いい質問ですね」は、まず、質問者の質問を肯定的に受け止めたと表明しています。質問に対する答えが提示されない(できない)場合もありますが、一言、「いい質問ですね」が入ることで円満にコミュニケーションを進める役割を担っています。
「良問」は「いい質問」?
「良問」という言葉があります。良い問い、ですから「いい質問」の意味で使われる単語のように見えますが、違います。良い「問題」と言い換えるのが適当で、学習関係の文脈で使われます。
- 公式を丸暗記しただけでは解けない良問
- 単語の知識も文法知識も同時に問える良問
- 良問を選りすぐった問題集