「なにそれ」の概要
「なにそれ」は、「それ(は)何(ですか?)」の倒置です。字義通りには、何かについて、何であるか分からないから知りたいという意味であり、さらに倒置法を使うことで文体上の強調が加わり、話し手の感情を込めた表現として利用されるようになっています。
この記事では、「なにそれ」単独で使われる用法と、「なにそれこわい」「なにそれ美味しいの?」などのようにセットで使われる表現に分けて解説します。
「なにそれ」単独用法
単独で使われる「なにそれ」は、疑問文の他に、反語的に「それはあり得ない」という否定的な意味で使われることがあります。「それ」が何であるかたずねているというよりは、「それが何か」分かった上で否定的な感情を抱いている表現なのです。
例えば、将棋をしていて、相手が打ってきた手について、それが明らかでありながらも、あまりに予想外である、あり得ないと思いたいがために「なにそれ?」と使われることがあります。
また、下記の例のように、「なにそれ」の直後にその事態への評価が直接続けられることもあり、単純な疑問表現ではないことは明らかですね。
- なにそれ、許しがたい。
- なにそれ、そんなの酷過ぎる。
「なにそれこわい」
「なにそれこわい」は、インターネットの掲示板2ちゃんねる(現5ちゃんねる)の書き込みから生まれたネットスラングで、勘違いの結果「何かよく分からないけど、それは怖い」と思っている、というさまを表すセリフです。
「なにそれこわい」の元ネタ
「なにそれこわい」の元ネタとなった書き込みでは、まず最初に店員から「ポイントカードはお持ちですか?」と聞かれた「ぼく」が「ポイントカードはお餅ですか?」と聞き間違えます。
そのまま、お互いがお互いの認識に気づかないまま会話が進んでしまい、「ぼく」はポイントカードを得体の知れない不気味な代物扱いしてしまいます。
ぼく「くさったりしませんか」
店員「えっ」
ぼく「えっ」
店員「ああ期限のことなら最後に使ってから一年間使わないときれます」
ぼく「なにそれこわい」
店員「ちょくちょく来ていただければ無期限と同じですよ」
ぼく「なにそれもこわい」
店員「えっ」
ぼく「えっ」
現実にこのような誤解が起こるとは思えませんが、「お持ち/お餅」の同音異義語の誤りをおもしろおかしく誇張・脚色した言葉遊びの結末として、「なにそれこわい」が用いられていることがわかります。
用例
- 「僕とつきあって(付き合って/突き合って)」「なにそれこわい」
- 「しぼう(志望/死亡)理由をお聞かせください」「なにそれこわい」
「なにそれ美味しいの?」
得体の知れないものに怖さを感じている「なにそれこわい」と反対に、本当は相手の言っていることが分かっているのに、それはひょっとして美味しい食べ物か何か?ととぼけて見せるのが、「なにそれ美味しいの?」という表現です。
- ダブルチェック?なにそれ美味しいの?
上の例では、ダブルチェックを促された人が面倒だと思い、ダブルチェックという言葉を知らない振りをしてごまかそうとしています。「美味しいの?」の代わりに「食えるの?」「うまいの?」と言われることもあります。
さらに、あからさまに無知を装うことで話題の対象への無関心や拒絶の表明として用いられることも多くあります。
- 婚活? なにそれ美味しいの?
「なにそれ○○」の使用事例
「なにそれ」を含む表現はネット上だけに限らず、楽曲やアニメでも一般的に使われています。とくに有名な作品例を以下に挙げます。
「クリスマス?なにそれ?美味しいの?」
「クリスマス?なにそれ?美味しいの?」は、音楽プロデューサーの前山田健一さんがヒャダイン名義で2010年にリリースした曲です。
クリスマスに特に予定もなく過ごしているから、クリスマスなんて自分には関係ない、という内容の歌です。クリスマスへの無関心、拒絶を「なにそれ美味しいの」で表しています。
『ラブライブ!』より「なにそれ意味分かんない」
「なにそれ意味分かんない」というセリフは、『ラブライブ!』シリーズ第一作の主人公の一人、西木野真姫(にしきの まき)を象徴するセリフとして知られています。
「ラブライブ!」シリーズはアイドルをテーマとした作品ですが、西木野真姫は最初にアイドルとして勧誘されたとき、「なにそれ意味分かんない」と拒絶したのです。
クールなキャラクターである西木野真姫を端的に表すフレーズとして、好んで使うファンが多いようです。
#西木野真姫生誕祭2017#西木野真姫#西木野真姫生誕祭
— キサラギ@ (@fb_jr_soldier) April 18, 2017
フライング?なにそれ意味わかんないっ意味わかんないナイナイアガラ?
西木野真姫ちゃん誕生日おめでとーう!
貴女はツンデレに赤髪がよく似合うアイドルだ! pic.twitter.com/J2mZ0t3Njj