「導く」の意味
「導く」の意味は、非常に大きく捉えると「何かが何かを別のところに至らせる」ことです。実際には、物理的な移動なのか、抽象的、もしくは状態変化とも言える「別のところ」なのか等で使われ方は分かれていきます。
本記事では、4つの意味に分類して詳細を後述します。
- 指導する
- 案内する
- 至らせる
- 結論を引き出す
「導く」①:指導する
「導」という漢字は、誰かの手を引いて道を行くことを象って(かたどって)います。「導く」の意味の一つは、やり方を示して手引すること。生き方や、学問や研究などの道を示して、その道を進ませることです。
この意味で用いられる「導く」は、物理的な道筋や場所についてではなく、抽象的なものについて使う言葉です。「指導する」とも言い換えられます。なお、「指導する」については後述します。
- 生徒を非行から守り、健全に成長するように導くのが教師の役目だ。
- 神に導かれて信仰の道に入った。
「導く」②:案内する
「導く」②は目的の場所まで連れて行く、つまり、案内するという意味です。「導く」にいくつかの意味のある中で、具体的な場所へ至らせる用法にあたります。
本来の字義に一番近い用法と言えるでしょう。読みとしても「みちびく」、すなわち「道・引く」から来ています。
- 参拝客を境内に導く
- 救助隊員が遭難者を麓まで導いて帰還させた
「導く」③:至らせる
「導く」には、何かをある状態になるように仕向ける、至らせるという意味もあります。①の意味と少し似ていますね。しかし、こちらは物事や事柄の状態が変化することを表します。
故意に状態を変化させるという場合は、「誘う・誘引する」「煽る」。また、自然と変化したという場合は、「至らしめる」「結果となる」とも言えるでしょう。
- 隕石が恐竜を絶滅に導いた。
- デマを広めて民衆を混乱に導く。
「導く」④:結論を引き出す
「導く」④の意味は、答えや結論を引き出すことです。純粋に抽象的な思考のプロセスとしてある地点に至らせるということで、「導く」の語義の中では最も抽象化が進んでいます。
- アンケート結果の分析から、主たる購買層は若年層との結論が導かれた。
- 追跡調査から解決策を導いた。
特に数学で論理的帰結を表すときに使われる語です。
- 以上から、n+1の場合が導かれる
- 定理から導かれる命題のことを系と言う。
「導く」の類語
ここでは「指導する」という意味で用いられるときの「導く」の類語を解説します。
「指導」する、されるシーンは日常生活でも社会生活でも頻繁に現れます。しかし、「私を導いてください」や「お導き下さい」は仰々しく、あまり一般的な言い方ではありません。
単語をより平易に変えて「教えて下さい」にすると、今度は幼稚です。一般に通用する、適切な言い方を以下に紹介します。
指導する
語義説明にも使われていた「指導する」は「導く」に比べ、何らかの目的に沿って教えるという意味合いが強い言葉です。分かりやすく、使いやすい単語です。
依頼するような文脈では、「しっかりやれと励ます」という意味を持つ「鞭撻(べんたつ)」という言葉と組み合わせて「ご指導ご鞭撻」という形で使われることがよくあります。
- よろしくご指導ください。
- ご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。
教授する
「教授する」は、単に教え導く時ではなく、専門的な事柄を教える時に使います。
- この件に関しましては、10年間担当していらっしゃる○○さんに是非ご教授頂ければと思っております。
- お気づきの点などご教授頂けましたら幸いです。
「教示する」という響きも文字の並びもよく似た単語があります。丁寧な表現という点では同じ文脈に現れますが、使える範囲は異なります。「教示」は簡単な伝達事項に対して使う言葉です。
「ご都合のよろしい日時をご教示ください。」のような表現で、「教示」の代わりに「教授」を使うことはできません。
指南する
「指南する」は本来、武道や武芸をはじめとする、技や芸を教えることに使われる言葉でした。現在では広く「教え導く」の意で使われることも多くなっています。
- また囲碁のご指南をいただけることを楽しみにしております。
- 定年退職後の生き方を指南する。