「陥る」とは?意味や使い方をご紹介

「陥る」意味は?と考えると、あまり良い意味で使われないのではと考える方も多いかもしれませんね。古い時代の文学にも登場する言葉ですが、現代では使われなくなった用例もいくつかあります。ここでは、「陥る」の意味と用例、表記の違いについても紹介します。

目次

  1. 「陥る」の意味
  2. 現代ではあまり使われない「陥る」の意味
  3. 「陥る」と「落ち入る」の表記の違い

「陥る」の意味

陥る(読み:おちい-る)は、ラ行五段活用(古語では四段活用)の動詞です。「落ち入る」や「落入る」という表記をする例もあります。

元々の意義は「落ちて中に入る」ですが、その意義から派生した意味・用例はどれも悪い状態・良くないことを表す時に使われています。

多くの意味を持つ言葉であり、ここでは下記の通り7つの意味に整理して説明します。

【意味】

  1. 落ちて中に入る・はまる
  2. 望ましくない状態になる・良くない状態にはまってしまう
  3. 相手の計略にかかって騙される・罠にかかる
  4. 攻められて負ける
  5. 死ぬ※
  6. 深くくぼむ※
  7. 流れ込む※

(※このうち、5~7番目の意味は現代であまり使われていないことから、さらに項目を分けて紹介します)

1.落ちて中に入る・はまる

「陥る」は、低い場所などに落ちて中に入る・はまり込むという意味です。穴などの深いへこみのある場所や、底なし沼などの足を取られて抜け出るのが大変な場所に落ちてしまい、抜け出られなくなった様子を表します。

【使用例】

  • 防空壕を掘った所に陥る。
  • ぬかるみに足を取られ、穴に陥ってしまった。
  • みな落ち入り騒ぎつるは。(訳:みんな穴に落ちてしまい大騒ぎになったのですよ。)(『枕草子・大進生晶が家に』より)

2.望ましくない状態になる・良くない状態にはまってしまう

「陥る」の深い場所にはまり込む意味から派生して、好ましくない状態になること・良くない状態にはまってしまうことにも使われます。

【使用例】

  • 大変なことをしたと自己嫌悪に陥る。
  • 恩師が重篤な状態に陥っていると聞いて動揺している。

3.相手の計略にかかって騙される・罠にかかる

好ましくない状態になるという意味からさらに派生して、「陥る」は相手の計略にかかって騙される罠にかかるという状態を表す場合があります。

【使用例】

  • 敵の企みに陥り、後に引けなくなった。
  • 相手の誘惑に陥ったため、全財産を持って行かれた。

4.攻められて負ける・攻め取られる

罠にかかるとか相手に騙されることから、「陥る」は相手に攻められて敗北する負けるという意味でも使われます。

【使用例】

  • 落城の憂き目に陥る。
  • 外堀が埋められ、城が陥る。

現代ではあまり使われない「陥る」の意味

こちらの項目では、「陥る」について、現代語であまり用いられない以下の3つの意味と用例を紹介します。

  1. 死ぬ
  2. 深くくぼむ
  3. 流れ込む

5.死ぬ

「陥る」が悪い状態になるのを表すことから、死ぬ・息を引き取るという意味で使われます。

現代語では、危篤に陥る・重篤な状態に陥る・生命の危機に陥るなどの、相手の状態が危機に瀕していることを表す言葉と組み合わせて、2の「良くない状態」になってしまう意味で用いる例を多く見かけますね。

「死ぬ」という非常にマイナスのイメージが強い言葉を和らげるために、直接的な表現を避けていると考えられます。

【使用例】

  • いつ陥りあそばすかもしれない。(訳:いつお亡くなりになるかもしれない。)(倉田百三『出家とその弟子』より)
  • 手負ひのただ今おちいるに、一日経書いて弔へとて(訳:判官(源義経)は「負傷者がたった今息を引き取ろうとしているので、一日経を書いて弔ってくれ」と言って)(『平家物語・巻第十一・嗣信最期』より)

6.深くくぼむ

「落ちて中にはまる」から派生して、「陥る」ははまった場所の状態を表す深くくぼむへこむという意味で使われている例もありました。

下記の使用例で示すように、源氏物語で光源氏に色目を使っている高齢でベテランの女房を描写する場面で用いられ、「年甲斐もなく」というような嘲る目線が見て取れるでしょう。作者の紫式部の意地が悪いほどの観察力の高さが感じられます。

【使用例】

  • 「目皮(まかは)らいたく黒みおちいりて」(訳:女房のまぶたが大変黒ずんで落ちくぼんでいて)(『源氏物語・紅葉賀』より)

7.流れ込む

「陥る」に高い場所から低い場所にはまり込む意味があることから派生して、水や河川が低い所に流れ込むことを表すために使われる例もあります。

このような意味で使われる場合は、目の前の景色を表しただけであり、他の用例と違って悪いイメージを描写することはありません。

【使用例】

  • 衣川は、和泉が城をめぐりて、高舘の下にて大河に落ち入る。(訳:衣川は和泉の城を回るようにして囲むように流れ、高舘の下で大河に流れ込んでいく。)(『奥の細道・平泉』より)

「陥る」と「落ち入る」の表記の違い

主に古語に多いのですが、「陥る」を「落ち入る」と表記している例もよく見られます。一概には言えませんが、表記の違いによって下記のような傾向があります。

【傾向】

  • 「陥る」…その時点での心身の状態周囲の状況などが悪くなっている。
  • 「落ち入る」…低い場所に移動する・下に落ちて入る・くぼむという人の動作物の動き様子を表す。


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