「覆す」の意味とは?
「覆す」(読み:くつがえ-す)は、五段活用の他動詞です。三つの意味に分けて説明します。
1.逆さにする
「覆す」の元々の意味は、物事を逆さまにする・裏に返す・それまでの関係を逆にしてしまうです。上下・左右・表裏・優劣などを逆向きにするということです。人間関係等の力関係や意外性があることにも使われます。
【使用例】
- 台風の高波が大きな船を覆してしまった。
- 天地無用となっているので、荷物の上下を覆してはいけない。
- 多くの人の予想を覆す有罪判決が下された。
- 最初は劣勢だったが、途中から主軸が奮起して試合を覆した。
2.大きなものを倒す
「逆さまにする」という意味から派生して、国や政権などの大きな存在を倒す・滅ぼすという意でも使われることがあります。
【使用例】
- フランス革命では市民が君主制を覆した。
- 内部告発で大企業を覆される大騒動となった。
- 汚職事件のスクープが政権を覆す。
3.根本から変わる
先ほどの2と同じく、「逆さまにする」から、ある時点まで続いてきたことや信じられてきたことが根本から変わってしまうという意味が派生しました。長年認められてきたことが180度変わり、真逆のことが正しかったと証明される事態をイメージすると分かりやすいでしょう。
【使用例】
- 昔は運動中に水を飲むなと言われたが、覆されて、今は水を飲めと言われるようになった。
- 定説を覆す世紀の大発見だ。
- Aさんのやり方は、自分の思い込みを覆す画期的な方法だ。
「覆」の字義
「覆す」の「覆」の字の成り立ちは、上からおおいかぶさるという意味がある「襾」(音読み:「ア」・訓読み:「おお-う」)に、かえる・ひきかえす・もどすという意味の「復」が付いたものです。
いったん上からかぶせた物事を再度逆にもどすという字義から、「覆す」に「逆さにする」・「倒す」・「変える」という意味が生じたと考えられています。
「覆す」の類語
1.逆さにする
逆さにするという意味で用いられる「覆す」の類語は多くあります。以下はその一例です。
【仰向く(あおむく)】
- 意味:上を向く。
- 例文:洪水に流された車が仰向いている。
【転倒】
- 意味:さかさまにする。さかさまになる。
- 例文:君と上司は上下関係が転倒しているね。
【転覆】
- 意味:車両や船舶などが上下逆になること。
- 例文:トレジャーボートが転覆したが、全員救助された。
【ひっくり返す】
- 意味:裏返す。
- 例文:予想をひっくり返す大逆転劇となった。
【翻す(ひるがえす)】
- 意味:さっと裏返しにする。態度を急変させる。
- 例文:今までの主張を翻して、さっさと反対派に鞍替えした。
2.大きなものを倒す
「国や政権を覆す」といった場合、「打倒」や上でご紹介した「転覆」などの言葉で言い換えることができます。また、国や政権を覆すこと自体は、クーデター、革命、政変とも言い表せるでしょう。
【打倒】
- 意味:うちたおす、または、打ち負かすこと。
- 例文:次の選挙では、野党が与党を打倒するだろう。
【転覆】
- 意味:大きな組織が倒れて滅びること。
- 例文:独裁者による政権を転覆させた。
3.根本から変わる
「常識を覆す」というときの「覆す」には、「改まる」、上での紹介した「ひっくり返す」などの類語が挙げられます。
【改まる・改める】
- 意味:今までと違った状態になる・今までと違った状態にする。
- 例文:クレームを受けて今までの運営方法を改めた。
【ひっくり返す】
- 意味:関係を逆転させる。
- 例文:それは今までの常識をひっくり返す発明だった。