「不甲斐ない」とは
「不甲斐ない(ふがいない)」とは、「情けなくなるほど、だらしがないさま」「意気地がないさま」を指す形容詞です。
通常は「ふがいない」とひらがなで表記されることが多く、漢字で表す場合は「腑甲斐ない」または「不甲斐ない」と書きます。
この場合、「腑甲斐」と書くのが正式ですが、現代では「不甲斐」と表記するのが一般的とされています。「腑」は内蔵や心を表す字、「不」は打ち消しの意味を持つ字ですが、「甲斐」も含め「不(腑)甲斐ない」はすべて当て字だと言われています。
「不甲斐ない」を用いた例文
- 先日の試合では最下位に終わるなど、応援してくれた仲間に不甲斐ない姿を見せてしまった。
- 勧められるままに購入した商品が偽物だとわかり、つくづく自分の不甲斐なさが嫌になる。
- 不甲斐ないことに、打ち合わせに遅刻をしたうえ必要な書類がそろってなかった。
- 私の一言が相手をここまで追い詰めていたことに気付かぬとは、なんとも不甲斐ない。
- こんなに日々時間に追われてしまうのも、元はと言えば自分の不甲斐なさが原因だ。
「かい(甲斐)」が持つ意味
「不甲斐ない」の「かい」には次のような意味があります。
- ある行動に値するだけの効果
- (動詞の連用形や名詞に付いて「がい」の形で)○○するだけの価値、(同)○○にふさわしい効果
それぞれどのような使い方をするのか、以下に例文を挙げてみます。
「ある行動に値するだけの効果」
- 練習のかいがあって、初めての発表会は大成功だった。
- せっかく夜景を見に来たのに、天候が悪いからといってこのまま帰るのでは来たかいがない。
「○○するだけの価値」「○○にふさわしい効果」
- アルバイト仲間の中では一番勤務年数が長いのに、新人と全く同じ時給では働きがいがない。
- 彼女はどんなに小さなことでも細心の注意を払って作業してくれるので、本当に頼みがいがある。
- 年がいもなく、女子高生と一緒に流行りのスイーツ店の行列に並んでしまった。
「不甲斐ない」の語源
「ふがいない」を漢字表記する際には、「甲斐(かい)」という漢字が当てられます。「甲斐」は現在の山梨県の旧国名ですが、なぜこの字が当てられるのかは、はっきりとはわかっていません。
ただし、なぜ「情けないさま」を「不(腑)甲斐ない」というのか、という点については諸説あります。
- 「腑」は「性根」を意味することから、「根性も甲斐性もない」という意味になった、とする説
- 「甲斐」は「詮」のことで「詮」が効果を意味することから、「効果が得られない」という意味になった、とする説
- 平安時代の書物に出て来る「言ふ甲斐なし(言うだけのかいがない)」という表現を略した言葉だ、とする説
- 『竹取物語』の中でかぐや姫に「燕の子安貝」を求められた石上麻呂が、手に入れることができなかった時に言った「貝がない」が語源だ、とする説
とはいえ、どの説が有力かという点については未だ不明のままです。
「不甲斐ない」のまとめ
「不甲斐ない」には「不」という打消しを表す接頭語が付いています。そしてそれだけではなく、語尾にも「ない」が付いています。これはもしかして二重否定なのではと思われるかもしれませんが、二重否定ではありません。
語尾の「ない」は「ある、無い」の「ない」ではなく、形容詞の接尾語です。つまり、「不甲斐ない」まででひとつの言葉になのです。
なお、「甲斐性がない」という言葉もありますが、こちらは「甲斐性」という名詞を打消している言葉であり「不甲斐ない」とは別物です。
「不甲斐ない」と同じように「ない」のつく形容詞には、「あどけない」「おぼつかない」「かたじけない」「ぎこちない」「切ない」などがあります。ひらがなで「ない」と表記すること、「~ません」への言い換えはできないことが、これらの語の特徴です。