「魑魅魍魎」の読み方
「魑魅魍魎」は「ちみもうりょう」と読みます。漢字は見たことがないという方でも、耳にしたことはあるのではないでしょうか?
アクセントは最初の「ち」に置かれますが、後半の「りょう」に2つ目のアクセントを置くこともあります。
「魑魅魍魎」の意味
「魑魅魍魎」は様々な化け物や妖怪、人外の存在のことです。民話や昔話によく登場しますよね。
元々はそういった想像上の生き物を指す言葉だったのですが、現在は妖怪のように恐ろしい人間にも使われています。自分の利益のためなら平気で人を蹴落とす邪な人です。悪徳政治家などが代表例ですね。
「魑魅」とは山や林の精気から生まれた妖怪のことで、人をだます怪物です。「魍魎」は山や川、木や石の精で、こちらもよく人をだます化け物です。元はこだまのことだったのですが、今では妖怪の意味でよく使われます。
「魑魅魍魎」の使い方
- 明かりも人気もない夜の山中は、不気味な雰囲気で今にも魑魅魍魎の類が出てきそうだ。
- この森には魑魅魍魎が棲んでいるという言い伝えがある。
- 政治の中枢には権力に取りつかれた魑魅魍魎が跋扈(ばっこ)するものだ。
「魑魅魍魎」の出典
「魑魅魍魎」の由来
「魑魅魍魎」の出典は、一般には魯(ろ)の左丘明(さきゅうめい)という人が著した『春秋左氏伝(しゅんじゅうさしでん)』であると言われています。
中国には王権の象徴として玉璽(ぎょくじ)というものがありますが、それとは別に地方分権の象徴に鼎(かなえ)というものがあります。中国最初の王朝、夏王朝の時代に作られたもので、支配している地域全土から集めた金属で作ったので、地方支配の象徴というわけです。
この鼎には怪物を含めてあらゆるものが描かれていたといいます。そのため、この鼎を見て何が妖怪か学んでおけば、妖怪にだまされることもなくなります。
だから人々は山や川で害をなすものや魑魅魍魎に遭遇せずに平和な時代を過ごしてきたと伝えられています。
鼎の軽重(けいちょう)を問う
この話には続きがあります。周王朝が衰退しつつある頃のことです。後に戦国の七雄として知られる楚(そ)の荘王が異民族を討伐した帰りに、軍を率いたまま周の国境付近にやってきました。
単に兵を見せる儀式やパフォーマンスの一環だったようですが、その気になれば攻められる状況です。攻められたらまずいと思った周王の使いとして、王孫満という人がやってきます。
荘王は王孫満に権力者が手にするという鼎の重さを尋ねます。周が衰えているのなら、権力の象徴も軽くなっているのではないかと。
そこで王孫満は鼎の由来を話した上でこう伝えます。重要なのは鼎の重さではなく、王に徳や天命があることで、今はまだ周王の世であると。この故事から権力者の地位や権力を疑い、奪おうとすることを「鼎の軽重を問う」といいます。
「魑魅魍魎」の関連語
妖怪変化
「魑魅魍魎」とよく似た意味の四字熟語に「妖怪変化」があります。「妖怪変化」は常識では理解できないような化け物や怪物のことです。
「妖怪」も「変化」も化け物という意味です。間違えやすいのですが、「妖怪に化ける」や「妖怪が化ける」といった意味ではありません。
百鬼夜行
「百鬼夜行(ひゃっきやこう、ひゃっきやぎょう)」とは妖怪が夜中に列をなして出歩いていることです。また、妖怪を人に例えて、悪人や得体のしれない人たちがのさばることにも使われます。
奇々怪々
「奇々怪々」は非常に不思議で怪しい様子のことです。妖怪や化け物の仕業かと疑うような不気味な事件や出来事に使われます。