「言わずもがな」分解して意味を考えよう
「言わずもがな」という言葉は、1つの語句の繋がりで考えると意味が分かりにくいでしょう。「言わず」と「もがな」の2つに言葉を分けて説明をします。
「言わず」は現代の話し言葉でも、時々使われることもあります。しかし、どちらかと言うと固い表現で文章を書く際に用いられることが多いでしょう。「ず」は古文の言葉がそのまま現代でも使われています。
「もがな」は、中古から用いられた語句で、かなり古い時代から使われてきた語句です。中古とは、日本の歴史を時代ごとに区分した言葉です。主に平安時代あたりを指し、場合によっては鎌倉時代まで含むこともあります。
「言わず」の意味
「言わず」を品詞ごとに分けて説明します。言葉の意味は「言わない」です。「言わ」は五段活用の動詞「言う」の未然形です。「ず」は動詞の未然形に付きます。否定や打ち消しの意味を表す助動詞「ず」の連用形が付いた語句です。
「ず」は現代語の語句ではなく、昔使われた文語的な表現が現代でも残って使われています。話し言葉よりも手紙や文書などの書き言葉で使われることがほとんどでしょう。
「もがな」の意味
「もがな」は終助詞が2つ付いた言葉で、「~であればなあ」とか「~だといいのになあ」という意味になります。前に付いた語の状態になることを希望する言葉と考えると分かりやすいでしょう。
「もが」は願望の終助詞で、前に付いた言葉の存在や、その状態が実際のことになればいいのにと実現するのを願う意味になります。「な」は、自分の意志や望みを表す終助詞で「~しよう」とか「~したい」、「~してほしい」という意味合いになります。
「もがな」という表現は平安時代から多く見られていて、今ではあまり使われることはありません。「言わずもがな」の形で慣用句として使われることがほとんどでしょう。
「言わずもがな」の意味は2つ
「言わずもがな」の意味には2つあります。1つずつを分けて説明します。
1.「言わない方がいい」「言わなければいいのに」
「言わずもがな」を語句の意味を、単語の意味そのままに訳すとこのようになります。「言わず」を「言わない」、「もがな」を「(言わないという状態)にするといいのに」とか、「(言わないで)ほしい」という意味として捉えます。
2つの語句を合わせて「言わないのであればいいのに」とか「言わないようにしてほしい」という意味になります。
2.「言うまでもなく当然のことだ」「言うまでもないことだ」
「言わなければいいのに」から「言わないという状態が当然なのに」という意味に転じさせて派生された言葉です。「言わないことが当然ということである」という点で「言うまでもないことだ」という意味になります。
「言わずもがな」の使い方
「言わずもがな」の使い方を「言わない方がいい」と「言うまでもなく当然のことだ」という2つの意味に分けて、例文を挙げて紹介します。
例文1.言わない方がいい
- Aはひどい奴だな!B子に向かって「お姉ちゃんはB子と似てなくて美人なんだね。」って言っていたんだ。言わずもがなのことだと分からないのかな。
- Cの前で食べ物の話は言わずもがなだぞ。明日は体重測定があるからって、食事を我慢しているんだ。絶対無駄だろうと声をかけるのも、言わずもがなだよ。怒られるからな。
- 事実であっても言わずもがなでしょう。なんで、Dに他の所に出かけていたことを告げ口するのかな。当日にドタキャンしたのは悪かったけど。
例文2.言うまでもなく当然のことだ
- 徳川家康が江戸幕府の初代征夷大将軍だというのは、言わずもがなの歴史上の出来事だ。
- 日本の推理小説で名探偵をと言えば、明智小五郎は言わずもがな、金田一耕助の名前を挙げる人もいるでしょう。
- 日本に根付いた外国の行事の代表格は言わずもがなクリスマスですが、近年ではハロウィーンを楽しむ人も増えています。
言わずもがなのまとめ
「言わずもがな」と言う言葉は、あまり話し言葉では使われなくなってきましたが、書き言葉では良く使われることもあります。慣用句のような語句ですので、手紙やメールで「言わない方がいい」とか「言うまでもなく当然だ」という言葉を使うことがあったら、書き入れてみることをおすすめします。