「転じて」とは
「転じて」は「てんじて」と読みます。本来「転じて」の意味は「視点・話題などを変えて。ところで。」であり、接続詞のように使います。
確かに辞書において「転じて」を調べると、上記の意味しか紹介されていないことが多いようです。しかし、そもそも「転じて」は「転ずる」もしくは「転じる」という言葉が元の形です。
「転ずる」「転じる」の連用形である「転じ」に、接続助詞「て」がついたことで、「転じ」+「て」=「転じて」になっています。
そのため「転じて」は「転ずる」「転じる」とおおよそ同様の意味もあると考えられます。
「転ずる」「転じる」とは
「転ずる」は「てんずる」、「転じる」は「てんじる」と読みます。言葉の意味は両方とも同じで、「方向・状態などを変える。移りかえる」もしくは「方向・状態などが変わる。移りかわる」といった意味を持っています。
例えば「会議が煮詰まってきたので、議題を転ずる(転じる)。」や「車の行き先を営業先へ転ずる(転じる)」。また「お客様の怒りの矛先が自分に転じる(転じる)。」や「プラスに転ずる(転じる)ことを祈る。」などのようにして使います。
「転じて」その他の使われ方
「転じて」という言葉は辞書に載っている以外に、「派生して・解釈を広げて考えて」といったニュアンスで使われることもあります。
このような意味合いで使われる「転じて」は、例えば「〇〇という言葉は、転じて△△という意味を持つようになった。」などのように、国語辞典の解説部分などでよく見かけます。
しかし「転じて」が何故このような使われ方をするのでしょうか。それでは一旦ここで「転じて」に使われている「転」という漢字に注目してみましょう。
「転」は音読みで「てん」。訓読みで「ころがる・ころげる・ころがす・ころぶ 」のように読みます。「転」の漢字自体は「ころがる。まわる。ころぶ。うつる。ますます。」という意味を持ちます。
もしかしたら「転」の漢字が元々持っている意味やイメージ。また「転じて」の元の形である「転ずる」「転じる」が持っている言葉の意味など、様々な要因がプラスされて、”「転じて」=「派生して・解釈を広げて考えて」”に繋がったのではないでしょうか。
「転じて」の使い方
- 4月は業績が悪い。転じて、新規開拓に関しては好調だ。(「ところで」の意味)
- 提出書類は各自確認して下さい。転じて、午後の予定はどうなっているのでしょうか?(「ところで」の意味)
- 彼女は元々温厚だった。しかし結婚したら転じて鬼嫁になった。(「状態変化」の意味)
- 麻雀用語の聴牌(テンパイ)という言葉が、転じて「興奮状態を指し示す」時に使われることもある(「派生して・解釈を広げて考えて」の意味)
「災い転じて福となす」とは
「災い転じて福となす」は「転じて」を使った代表的な故事成語です。「災いを転じて福となす」や「禍を転じて福と成す」のように表記されることもあります。
意味は「災いに襲われても、それを逆用して幸せになるように取り計らう。」で、「マイナスな出来事があっても、プラスにする(プラスになる)」といった意味のニュアンスを持っています。
つまり「災い転じて福となす」は言わば状態の変化。よってここで使われている「転じて」は、「転じて」の元の形である「転ずる」「転じる」の意味である「方向・状態などが変わる。移りかわる」からきていると考えられます。