「知らぬが花」の意味
「知らぬが花」は知らないでいる方がいい、という意味です。知ってしまうと不愉快なことになる、怖い思いをしてしまうから真実を知らない方が幸せなことを指します。
あるいは、露骨に言ってしまうと身もふたもないので、それなら言葉にしない方がかえって好ましいという意味でも用いられることがあります。
「知らぬが花」の由来
「知らぬが花」という言葉は本来的には誤りです。正しくは「知らぬが仏」と「言わぬが花」といいます。この二つのことわざが混ざってできたことに由来すると言われています。同じような誤用表現で「言わぬが仏」と書かれることもあります。
言わぬが花
「言わぬが花」とは元々、わざわざ口に出してしまうよりも言わないでいる方が趣があるという意味のことわざです。現在では少し受け取り方が変化して、口に出したくないから察してほしい、聞いたら後悔するから聞かない方がいいという意味で使われています。
元は能の言葉で、世阿弥の『風姿花伝(ふうしかでん)』に出てくる「秘すれば花」であったと言われています。
知らぬが仏
「知らぬが仏」は、真実を知ったら嫌な思いをするけれど、知らないでいれば穏やかな心でいられるという意味のことわざです。また、真実を知らないでいる能天気な人を皮肉って使うこともあります。
「知らぬが花」の使い方
「知らぬが花」は「言わぬが花」や「知らぬが仏」と同じ意味ですので、これらの言葉と同じように使えます。とはいえ、基本的には誤用ですのでわざわざ「知らぬが花」を使う必要はないでしょう。相手に間違いを指摘されてしまうかもしれません。
例文
- 家計が大変な理由を夫は増税のせいだと思っているが、実際は妻がへそくりを貯めているからだ。まさに知らぬが花だ。
- 映画が好評だったことに原作者も満足しているようだが、実際はひどい原作クラッシャーになっている。知らぬが花、と未だに誰も伝えられていない。
- 夫の浮気も知らなければ知らぬが花と気にしないでいられたのだが、現場に遭遇してはそうもいかない。
「知らぬが花」の類義語
知らぬは亭主ばかりなり
「知らぬは亭主ばかりなり」とは、周りの人は誰もが知っているのに夫だけは妻の浮気を知らないことをあざける言葉です。それだけ妻を信じている夫を笑う意図で用いられます。また、「知らぬが仏」などと同じように当人だけが大事なことを知らない様子を指すこともあります。
「知らぬは本人ばかりなり」や「知らぬは当人ばかりなり」とも使われます。
みなまで言うな
「みなまで言うな」とは話の内容は大体わかったから最後まで言わなくてもよい、言う必要がないという意味です。また、「言わぬが花」などと同じように口にしてしまえばかえって趣が失われるからあえて口にするべきではないという意味でも使われます。
「知らぬが花」の関連語
臭い物に蓋をする
「臭いものには蓋(ふた)をする」とは、知られると都合が悪いことを隠そうとすることです。失敗や不祥事、悪事などを誰にも知られないように闇に葬ることを指します。
その他、見たくないものや知りたくない事実から目を背けて向き合おうとしないという意味もあります。
口は禍の元
「口は禍(わざわい)の元」とは、うかつなことを言ってしまうと自分の不幸を招くという意味です。「口は災いの門」とも言います。「一言多い」や「口が滑る」など発言に関する慣用句はほかにもいくつかあります。