「はたまた」の意味
「はたまた」は、「もしくは、あるいは」「なお又」といった意味で、接続詞的に用いる語です。漢字で書くと「将又」となります。
古い言い回しなので会話中に使われることはあまりないでしょうが、小説などの読み物で目にすることはあるのではないでしょうか。
「はたまた」の語源
「はたまた」の「はた(将)」には「それとも、あるいは」「~もまた」という意味があります。一方「はたまた」の「また(又)」にも、「同じく」「そのほかに」といった意味があります。
つまり、「はたまた」は同義の言葉を2つ連ねて、「はた」や「また」の意味を強調する語なのです。
「はたまた」の使い方:基本編
「はたまた」の意義である「もしくは、あるいは」と「なお又」は似ているようですが、接続詞としての目的はそれぞれ異なるので注意しましょう。
まず「もしくは、あるいは」は、前述の内容とは別の選択肢を提示するための接続詞です。「Aの方法か、もしくはBの方法か」「Aのルートか、あるいはBのルートか」のように用います。注目すべきは、選択肢は複数でも基本的に答えはひとつであるということです。
一方「なお又」は、前述の内容に後述の内容を付け加える際に使用されます。「Aであり、なお又Bでもある」というように、「その上さらに」という意味合いで用いられる接続詞なので、AかBかを選択するものではありません。
「はたまた」は、このどちらの用法も許されています。したがって、どちらの意味合いで使用されているかは、文脈から読み取る必要があります。
「はたまた」の例文
【もしくは、あるいは】
- 女の勘か執念か、はたまた愛の力の為せるわざか、1万人でごった返す人混みの中から、彼女は彼を探し出した。
- 彼は天使か、はたまた悪魔か。
- 勝利にせよ、はたまた敗北にせよ、3年間流してきた汗は無駄にはならない。
【なお又】
- 悲しくもあり、はたまた可笑しくもある。
- 伊達や酔狂や、はたまた同情心などという軽薄な感情からしたことではない。
「はたまた」の使い方:応用編
「はたまた」は後述の内容を強調する
「はたまた」は先述のとおり、同義の言葉を連ねて意味を強調した語なので、「あるいは」や「それとも」よりもややオーバーな言い回しになります。
- 天狗か、河童か
- 天狗か、あるいは河童か
- 天狗か、はたまた河童か
3よりも、1や2の方が淡々として理路整然とした印象を受けませんか?また1、2が選択肢を同列に並べているのに対し、3は「天狗」よりも「河童」がやや強調されています。
ダメ押しとしての「はたまた」
それを踏まえて、以下の文章を読み比べてみてください。
- 犬か、猫か、猿か
- 犬か、猫か、はたまた猿か
2における「猿」が他の選択肢より強調されているのが、よりハッキリとわかるのではないでしょうか。2における「猿」は、「犬か猫」という選択肢だけで事足りるところを、ダメ押しで提示したニュアンスです。
1と2の例文を意訳すると、以下のようになります。
- 犬かな?猫かな?猿かな?
- 犬かな?猫かな?いやいや、ひょっとすると猿かもしれない
ダメ押しの効果的な使い方
最後に、以下の例文を読み比べて、どちらがよりダメ押しとして効果的か確認してみてください。
- 天狗か、化け猫か、雪女か、小豆洗いか、はたまた河童か
- 犬か、猫か、猿か、猪か、はたまた河童か
1はダメ押しとなる「河童」と、それ以外の選択肢が同じ分類(妖怪)です。一方、2は犬や猫といった現実に存在する動物を列挙したうえで、最後に「河童」という異質な選択肢を挙げています。意訳すると、もっと意図がわかりやすくなります。
- 天狗かな、化け猫かな、雪女かな、小豆洗いかな?いやいや、ひょっとすると河童かもしれない
- 犬かな、猫かな、猿かな、猪かな?いやいや、ひょっとすると河童かもしれない
もちろん使い方に絶対はありませんが、ダメ押しの選択肢とそれ以外の選択肢の、カテゴリや程度などにギャップがあればあるほど、「はたまた」が効果的にきいてきます。ダメ押しとして「はたまた」を使う際には、ぜひチャレンジしてみてください。
【ギャップの例】
- 停電だ。ブレーカーか、落雷か、はたまた大規模テロか。
- メガネが見当たらない。どこかに置き忘れたか、はたまた怪盗ルパンに奪われたか。