「手前味噌」の意味
手前味噌の意味は、「自分で自分をほめること」「自画自賛」です。「手前」とは「自分の前」「自分に近い方」というほかに「へりくだって言う自称代名詞」つまり英語の「I」と同じ意味を持ちます。
「味噌」は「大豆を煮てつき砕き、麹と塩を混ぜて発酵させたもの」「調味料」という言葉のほかに「得意に思っている点」という意味があります。
かつて「味噌」は各家庭で作られた家の味でした。「手前味噌」は自分の家の味噌はおいしいですよと自慢することから生まれた、日本ならではの言葉です。
「手前味噌」の使い方
「手前味噌」はスピーチや、何か自分の得意とすることを発表する際に使われることが多い言葉です。
「手前味噌ですが、実はうちの娘が学校で表彰されました。」
「手前味噌ですがここでお祝いの歌を披露させていただきます。」
「手前味噌ではございますが、趣味のそばを打ってきましたのでお召し上がりください。」
ストレートに自慢するわけでなく、少し恐縮をしたイメージとなるため、受け手は嫌味として感じにくくなります。また、ビジネスシーンでは、
「手前味噌となりますが、こちらの商品はお客様から大変ご好評いただいております」
「手前味噌ですが、我が社の製品は現在製造が追いつかない売れ行きでして」
このように、使用することで自社を誇りつつ、腰の低さも感じさせるため、さりげなく自慢をすることが出来ます。
「手前味噌」の類義語
謙虚に自慢する「手前味噌」ですが、若い方にはなじみがなく、なかなか使いにくいかもしれません。そこで意味の似た意味の言葉の使用例をお伝えしましょう。
「自分で言うのもなんですが、学生の頃に県大会で優勝いたしました。」
「自慢するようでお恥ずかしいのですが、これがその時にもらったメダルです」
「私が言うのもおこがましいのですが、この企画は良い成果を上げ、大変喜んでいただけました」
と、自慢したい気持ちをストレートに伝えず、一旦へりくだることで「手前味噌」と同じ意味となります。
「味噌」の由来
日本人にとって切っても切れない調味料「味噌」。そもそも味噌の起源は中国から渡ってきた今でいう魚醤(ぎょしょう)に似た「醤」と、大豆と雑穀と塩から作られた「豉」という、発酵食品だといわれています。
日本の文献に「味噌」という言葉が出てきたのは平安時代からと、長く日本人の生活に寄り添ってきたことがわかります。
最近では海外でも日本食ブームということもあり、健康に良い発酵食品として味噌が注目されています。まさに「手前味噌」ですが、素晴らしいこの食文化を、これからも受けついでいきたいですね。
「手前味噌」の作り方
お味噌は大豆、米麹、塩さえそろえれば自宅で作ることが出来ます。長野の家庭で冬になると今でも作られている「信州味噌」の作り方をご紹介します。
- 水につけしっかり戻した大豆を軟らかくなるまで茹でる
- ゆであがった豆をすり鉢などで丁寧につぶし、米麹、塩を加えよく混ぜ、さらに水を加え良く練る
- 練ったらいくつかに分けて丸め味噌玉を作る
- 焼酎で消毒をした容器にたたきつけるように味噌玉をいれ、しっかりと封をし、日の当たらないところに置き発酵させる
- お盆になったら封を外し、カビが出ていたら取り除き、しっかりと底から混ぜ再度重石と、封をして秋まで寝かせておきます。11月ごろから食べることが出来ます。
材料の分量や発酵させる時間はもちろん、各ご家庭の保管状況などによっても味は変わってきます。だからこそ馴れ親しんだ「手前味噌」は美味しく、ついつい自慢したくなってしまうのです。