「如く」の意味
「如く」は「ごとく」と読み、他のものと比べて例える時に使う助動詞です。「～のように」「～のとおり」という意味で、「如し」の連用形です。
連用形とは、単語を活用するときの形である、活用形の一種です。「如し」が基本形。「如く」は連用形で用語（動詞）に連なる形です。連体形は「如き」となり、体言（名詞）に連なる形となっています。
「如く」の例文
例えば、「いつもの如く」の意味は、いつものように、相変わらず、いつも通りになります。
【例文】
- 今夜も、いつもの如く残業になりそうだ。
- 例の如く彼だけ会議を欠席している。
- 馬車馬（ばしゃうま）の如く働かされてヘトヘトだ。
- 彼女はいつも独楽鼠（こまねずみ）の如く働いている。
「如し」の意味
「如く」の基本形である「如し」は、2つ以上の物や状況において、それらが同等あるいは、類似のものであることを表現する時に使用します。「如し」の意味は4種類あります。例文を使って見てみましょう。
| 分類 | 意味 | 例文 |
| 類似 | ～に似ている、まるで～のようだ | この布の光沢は絹の如し。 |
| 同等 | ～と同じだ、～のとおり | 使い方のわからない道具はガラクタの如し。 |
| 例示 | 例えば～のようだ | 今日は11月にしては暖かで、春の陽気の如し。 |
| 比喩 見立て |
～のようだ | 彼女の横顔は亡くなった母の如し。 |
「如く」の類語
「如く」の類語には、「あたかも（恰も）、さながら、思わせる」などがあります。「あたかも（恰も）」は「ちょうど、まさに、まるで」という意味です。「如し、如く、如き」と同時に使われる場合もあります。（例：彼は、あたかも自分が経験したかの如き臨場感をもって話し始めた）
「さながら」は、「本物を思い起こされる、そのまま、同然」という意味になります。さながらは名詞につく言葉です。（例：あの画家が描く絵は、さながら写真のようだ）
「思わせる」は「連想させる、思い起こす」という意味です。（例：この鈴の音は、むかし飼っていた猫を思わせる）
「如く」を使った慣用句
- 「脱兎の如し」…脱兎とは兎（うさぎ）が逃げる様を表しています。兎が逃げる時のように逃げ足が早いという意味です。
- 「読んで字の如く」…「読むだけで意味が分かる、書かれている通り」という意味です。例えば炒飯（チャーハン）という文字を見ると、ご飯を炒めたということがわかります。
- 「湯水の如く」…例えば、「湯水のごとく金を使う」なら、湯や水のように惜しげもなく金を使うことを意味しています。
如く（ごとく）と、如く（しく）の違い
如く（ごとく）と同じ漢字を使う言葉に、如く（しく）があります。紛らわしいので、漢字を使わず「ごとく」「しく」としましょう。
「しく」には「如く、若く、及く」の3つの漢字表記があり、「追いつく、及ぶ、匹敵する」という意味があります。
「及ぶ」は「達する、追いつく」、「匹敵する」は「同じくらいの価値である。並ぶ」ということです。「ごとく」は似ていることを表す言葉なので、「しく」とは少し意味が異なります。
「しく」を使っている言葉
「三十六計逃げるに如かず」は、中国古来の兵法（戦闘に勝つための方法論）である、三十六種類の方法のうちのひとつから、「追い詰められた時は、逃げることに匹敵する策はない」ことを意味することわざです。
「衣は新に若くはなく人は故きに若くはなし（いはしんにしくはなく／ひとはふるきにしくはなし ）」とは、「衣服は新しいほうが良いが、友人は古くから付き合いのある人のほうが良い」という意味で、中国に古くから伝わる言葉です。
「如く」と「風林火山」
戦国大名の武田信玄が旗に使っていた事で知られている言葉、「疾如風、徐如林、侵掠如火、不動如山」を端的に表して「風林火山」と呼びます。元は中国の古典である、孫子（兵法書）からきています。
日本語に訳すと、「疾（はや）きこと風の如く、徐（しず）かなること林の如く、侵略すること火の如く、動かざること山野如し」です。
これをわかりやすくすると、「風のように早く移動し、敵に悟られぬため林のように静かにして、攻撃するときは火のような勢いで襲い、自衛する時は山のように動かずに守る」となります。この場合の「如く（如し）」は、全て「～のように」という意味です。