「生クリーム」とは?
乳等省令では生クリームを「生乳、牛乳または特別牛乳から乳脂肪分以外の成分を除去し、乳脂肪分を18.0%以上にしたもの」と定めています。
つまり、「生クリーム」とは、生乳から分離した乳脂肪分だけを原料としたものです。他のものが入っていると生クリームとは呼べません。
生クリームの分類
脂肪分が18~30%の生クリームは「ライトクリーム」と呼ばれ、コーヒー用に使われます。脂肪分が30%以上のものは「ヘビークリーム」といい、ホイップ用に使われています。また、イギリスでスコーンに添えられる「クロテッドクリーム」は脂肪分が55%です。
クリームを泡立てるには最低30%以上の脂肪分が必要で、市販の「生クリーム」には36%前後のものと45%前後のものの2種類があります。
「生クリーム」と「ホイップクリーム」の違い
英語の「whip」は名詞で「鞭」、動詞で「鞭を打つ」という意味の言葉です。この過去分詞形である「whipped」は「鞭で打たれた」から派生して「攪拌された」という意味をもちます。それで、泡立てた生クリームのことを「ホイップクリーム」と言います。
「ホイップクリーム」の定義
この本来のホイップクリームの材料になるものが「純生クリーム」です。しかし、日本では生乳だけではなく植物性油脂などを含む代用品のことも「ホイップクリーム」と呼びます。
純生クリームの代用品としてのホイップクリームとは、乳脂肪に添加物や植物性脂肪を加えたもの、または植物性脂肪のみのものを指します。
「生クリーム」が「ホイップクリーム」に変わるしくみ
生クリームが泡立つのは、攪拌の刺激によって脂肪球の外側にあるタンパク質の皮膜が破れ、脂肪が露出していくからです。
露出した脂肪は水と反発するので脂肪同士が空気を抱え込みながら凝縮していきます。これが次々とつながって、気泡を取り込んだ網目構造を作り、全体が適度な固さになったのが「泡立った」状態です。
「ホイップクリーム」の3つのタイプ
いわゆる「ホイップクリーム」、つまり「乳等を主原料とする食品」には3つのタイプがあります。
- 「クリーム」に乳化剤や安定剤を添加したもの:パッケージには「純乳脂」または「生クリーム100%」などと書かれています。添加物によって安定性や保形性を増したものです。
- 乳脂肪に植物性脂肪を加えたもの(コンパウンドクリーム):乳脂肪の一部を植物性脂肪に置き換えています。生乳が不足したときに植物性脂肪を加えたのが始まりです。
- 植物性脂肪のみのもの:脂肪分が植物性脂肪のみで、乳脂肪を含んでいないものです。
「生クリーム」と「ホイップクリーム」はどう使い分ける?
- 純生クリームの特徴…濃厚でコクがあり、風味がよい
- 植物性脂肪のホイップクリームの特徴…クセのないあっさりした味が特徴で、賞味期限が長く、安価
- コンパウンドクリームの特徴…ブレンドの割合でコクや作業性にバリエーションがある
ただし、乳脂肪は温度が高くなると不安定になる性質があるため、夏場などは特にデコレーションした後に泡が潰れ、形が崩れてしまうことがあります。
環境が悪い時には純生クリームよりも、乳化剤や安定剤が添加されたホイップクリームの方が使いやすいでしょう。
スプレータイプのホイップクリームも便利
最近では、スプレー缶に入ったタイプのホイップクリームもよく見かけるようになりました。ワンプッシュで簡単にホイップした甘いクリームを出すことができ、少量でも使えるのでとても便利です。
乳脂肪率は低めなので、ケーキのデコレーションには向きませんが、パンケーキやシフォンケーキに添えたり、コーヒーに浮かべたりして手軽にホイップクリームを楽しむのもいいですね。