「ひとえに」の意味や使い方
「ひとえに」という言葉には、細かく分けて以下の三つの意味があります。
- そのことだけを行う様子。ひたすら、一途に。
- 原因や理由や条件が、それに尽きること。もっぱら、まったく。
- それだけで、ほかのモノがない様子。一面に、単に。
このように色んな意味を含んでいる「ひとえに」ですが、この言葉は副詞であり、副詞とは他の何かを装飾する役割を持っています。なので何を装飾しているかによって、ある程度、意味するところを限定できます。
「ひとえに」の意味1:そのことだけを行う様子
「そのことだけを行う様子」の意味では、「ひとえにお願い申し上げます」のような形で使われます。この場合の「ひとえに」は願うことを装飾していて、ひた向きな感情を含んでいるというか、「ただそれだけをお願いします」のようなニュアンスです。
他には「ひとえに彼の無事を案ずる」でしたら、これは1の意味にもあるよう、「ひたすら彼の無事を案ずる」と言い換えられます。
「ひとえに」の意味2:それに尽きること
「それに尽きること」の意味では、「この成功は、ひとえに貴方たちのお陰だ」のような形で使われます。これは「まったくもって貴方たちのお陰だ」と言い換えられ、後ろに続く言葉を装飾することで、強く伝えている感じです。
他には「ひとえに努力の賜物だ」でしたら、「もっぱら努力の賜物だ」や、「ただただ、努力の賜物だ」のように言い換えられます。1の意味での例と比べると、若干ながら含むニュアンスが違っていますね。
「ひとえに」の意味3:ほかのモノがない様子
「ほかのモノがない様子」の意味では、「ひとえに咲く花」のような形で使われます。これは「一面に咲く花」という意味です。ただしこういった表現は昔の読み物などで使われていて、どちらかと言えば、現代ではあまり一般的ではないかもしれません。
「ひとえに」の漢字
「ひとえに」は漢字で、「偏に」と表します。元々は「一重」に「に」がついた言葉なのですが、「一重に」は誤記なので気をつけましょう。
少し分かりづらいかもしれませんが、「一重」に「に」がつくと「偏に」と変化して、また別の意味を持つということです。
「一重」とは?
上述を踏まえて紛らわしいですが、「一重」はそれだけであることや、重ならないであることなどの意味を持っています。たとえば重なっていない目蓋のことを、「一重の目蓋」と表します。
他には、タイミングなどが重なってはいないが僅かな差のことを、「紙一重」と言ったりします。元となる言葉だけあって「ひとえに」に通じてはいますが、細かい意味や使い方が違っていますね。
また二つ重なることを、「二重(ふたえ)」と表します。目蓋の例で言えば、「二重の目蓋」や「奥二重」という言葉があり、聞いたことのある方は多いかと思います。
「ひとえに」に関連する表現
「ひとえに」に関連する表現には、「お陰さま」、「ほかでもない」、「主(おも)に」などがあります。
「お陰さま」について
「お陰さま」とは、上述の例にも出てきた「お陰」を、更に丁寧にした表現です。この言葉は、相手の助けがあったことを感謝する意味を持っています。
使い方としては、その相手の助力に感謝するとき、「お陰さまで助かりました、ひとえに感謝いたします」のように用いられます。「助かりました、感謝いたします」と比べて、「お陰さま」や「ひとえに」を加えると、より丁寧な感じが伝わりますね。
「ほかでもない」について
「ほかでもない」とは、その話の内容を強調したり、強い印象を与えるための表現です。「そのことが大事だ!」のようなニュアンスを含んでいます。
使い方としては「話というのは、ほかでもない」や、「ほかでもない、キミの成果だ」などのように用いられます。ひたすらや一途とは違っていますが、そのことが重要という部分では、「ひとえ」の1の意味に通じるところがあります。
「主に」について
「主に」とは、中心となるところや、大部分、ほとんどという意味です。「ひとえに」における2の意味に通じるところがありますね。
使い方としては「主にAさんが頑張った」や、「大学では主に生物学を勉強している」などのように用いられます。