「是々非々」の読み方と意味
「ぜぜひひ」と読みます。「是々非々」とは、良いことは良い、悪いことは悪いと、しがらみにとらわれずに公平な立場で物事を判断することや、その姿勢を意味しています。「是是非非」とも書きます。
「是々非々」の「是」は、良いことや正しいこと、正しいと認めるという意味です。「非」は、よくないことや悪いこと、よくないとするということを意味しています。ですから、「是々非々」とは、良いことは良い、悪いことは悪いと判断するという意味になります。「是」と「非」は、反対語の関係にあります。
良いことを良い、悪いことを悪いと言うことは、一見簡単そうですが実はとても難しいことだと思いませんか?私たちは、沢山のしがらみや、自分自身の欲を持って生きています。そんな中で、良いことは良い、悪いことは悪いと言う為には、個人的な感情やしがらみに惑わされずに、客観的に公平な立場で物事を判断していかなくてはいけません。
なので「是々非々」は、ただ単に良いことを良い、悪いことを悪いということだけにとどまらず、公平公正に物事を判断するという意味で使われているのです。
「是々非々」の由来
「是々非々」の由来は、紀元前3世紀頃の中国の思想家「荀子(じゅんし)」の次の言葉です。
“是是、非非谓之知,非是、是非谓之愚。”
“是を是とし非を非とする、これを知といい、是を非とし非を是とする、これを愚という。”
この一文は、「良いことを良いと判断し、悪いことは悪いと判断することは道理にかなっている。ことの良し悪しを履き違えていることは愚かである。」と言っています。ここから、「是々非々」という言葉が生まれました。
「是々非々」で荀子が言いたかったこと
荀子は、著書の中で人格者のありかたについて説いています。荀子は「是々非々」という言葉を通して、人格者たる者は何事においてもしがらみにとらわれず、私情をはさむことなく、公平な立場で公正な判断をすることが大切だと言っているのです。
「是々非々」の使い方
では、「是々非々」はどの様に使えばいいのでしょうか。例文を見てみましょう。
「是々非々」の例文
1.政治家には政党や派閥のしがらみを捨て、国民の利益のために「是々非々」で臨んでほしい。
2.彼はあらゆる誘惑に打ち勝ち、最後まで「是々非々」の姿勢を貫いた。
3.わがままなお客様の要求に、「是々非々」で対応するのは至難の業だ。
4.「是々非々」主義の彼は、信頼できると慕われている反面、一部の人間からは杓子定規(しゃくしじょうぎ)だと敬遠されている。
「是々非々」の引用
“共産党であろうと何党であろうと、「是々非々」式にこれにのぞめばよいのです。”(恐怖の季節:三好十郎)
“彼の気質の中には政治家の泣き言の意味でない本来の意味の「是々非々」の態度を示そうとする傾向があった。”(ロマネスク:太宰治)
※いづれも青空文庫出典
例文の「是々非々」からは、とても真面目で正義感が強い印象を受けます。何があろうとも道理を尊重し、私情をはさまずに公平中立に判断するという強い意志が感じられます。このような点が、政治家がこの言葉を使いたがる理由なのでしょうね。「是々非々」は、自分自身が公平公正であるというアピールをするのに持って来いの言葉です。
「是々非々」「是非」「是非とも」「是が非でも」
「是々非々」と同じく、「是」と「非」を使う言葉を、混乱して間違わないように一度整理してみましょう。
「是非(ぜひ)」
意味:物事の善し悪しのこと。物事の善し悪しを判断すること。あるいは、相手に強くお願いするときの強調の言葉。
例文:独立の「是非」を問う。「是非」お願いいたします!
「是非とも(ぜひとも)」
意味:「是非」の副詞的用法をより丁寧にした言い回し。もしくは、自分の意思表示を丁寧な言い回しで表現する時に使われる言葉。
例文:「是非とも」、お立ち寄りください。「是非とも」、伺わせていただきます。
「是が非でも(ぜがひでも)」
意味:否が応でも、何が何でも、善かろうが悪かろうが
例文:「是が非でも」業績を黒字に転換させる。
同じ漢字を使い、似たような響きと意味を持つ言葉が複数存在すると、混乱の原因となります。しかし、きちんと整理して覚えることが出来ると、一度にたくさんの言葉を覚えるチャンスにもなります。これを機会に、「是」と「非」を使う言葉を整理して覚えましょう。
「是々非々」のまとめ
いかがでしたでしょうか。「是々非々」と言う言葉の意味や使い方をご理解いただけましたか。「是々非々」という言葉は堅苦しい言葉なので、なかなか日常生活で使うことはないと思います。しかし、「是々非々」はニュースや新聞では度々登場する言葉なので、「是が非でも」意味や使い方を理解しておいてくださいね。