「周章」と「狼狽」
まず「周章狼狽」は、「しゅうしょうろうばい」と読みます。この四字熟語は「周章」と「狼狽」、2つの言葉に分けられます。
「周章」について
「周章」とは、うろたえて騒ぐこと、慌てふためくことを意味します。この言葉は「周章てる」とも使われ、その場合は「あわてる」と読みます。
ただし「あわてる」に関しては、「慌てる」の方が一般的です。そして「周章てる」も「慌てる」も意味は同じで、落ち着きを失うことや、ひどく急ぐことを表します。
「狼狽」について
「狼狽」とは、思い掛けない出来事にうろたえること、慌てふためくことを意味します。「周章」とは同じ意味です。
「狼狽」は「狼狽える」とも使われ、その場合は「うろたえる」と読みます。「狼狽える」は不意を打たれて驚いたり、慌てたり、まごまごすることを表します。加えてうろうろと歩く、うろつくといった意味も持っています。
「周章狼狽」の意味
上述を踏まえて「周章狼狽」とは、大いに慌てることや、非常にうろたえることを意味します。「周章」と「狼狽」、同じ意味の言葉を組み合わせることで、慌て具合、うろたえている様子を強く表しています。
「周章狼狽」の使い方
「周章狼狽」は慌てること、うろたえることの程度が大きいとき、強調したいときに使われます。勿論そのまま「大いに慌てる」や「非常にうろたえる」でも程度の大きさは表現でき、「周章狼狽」は普段あまり見聞きしません。
しかしたとえば非常事態に対して使うとき、「非常事態に大いに慌てる」や「非常事態に非常にうろたえる」では、助詞の「に」が重なったり、「非常」という単語が重なったりと、あまり語感がよくありません。しかも言い回しが冗長なため、やや緊迫感が薄れる印象です。
その場合の代替候補として「とても」や「かなり」などもありますが、「とても」や「かなり」は若干ながら軽め、カジュアルな印象を与えかねない表現です。先の表現より簡潔ではありますが、深刻さのニュアンスはどうしても薄れがちです。
一方で硬めに「非常事態に周章狼狽する」と表せば、簡潔かつ違和感なく状況を表現できます。
「周章狼狽」の例文
- 「彼の反応を見たか?まさに周章狼狽だ」
- 「事の重大さを知った彼女は、周章狼狽している」
- 「事故に巻き込まれ、周章狼狽する」
「周章狼狽」と似た意味を持つ四字熟語
「周章狼狽」と似た意味を持つ四字熟語としては、「右往左往」や「心慌意乱」が挙げられます。
「右往左往」について
「右往左往」は「うおうさおう」と読み、慌てふためき、あちこちに行ったり来たりすること。混乱し、うろたえていること。まごまごすることを意味します。また大勢の人間が秩序もなく慌てふためく、という意味も持っています。
「周章狼狽」は大いに慌てる、驚くといった感情の表現のニュアンスが強いですが、対して「右往左往」は慌てたり驚いた結果としての、行動のニュアンスが強いです。
そして「右往左往」には「大勢の人間が~」の意味もあるので、たとえば程度は弱めでも、大勢の人間が慌てふためいている状況で、「右往左往」が使われます。ちなみにこの言葉は「左往右往」と、右と左を入れ替えても使われますが、どちらも同じ意味です。
「心慌意乱」について
「心慌意乱」は「しんこういらん」と読み、慌てて心が乱れ、混乱している状態を意味します。この四字熟語は「心慌」と「意乱」、2つの言葉に分けられますが、「心慌」は焦りや慌てること、「意乱」は心が入り乱れ、混乱することです。
「周章狼狽」と比べて、「心慌意乱」は混乱のニュアンスが強いです。うろたえるや慌てるとの違いは曖昧ながらも、「もう何が何だか分からない」といったときに「心慌意乱」が使われます。
「周章狼狽」と反対の意味を持つ四字熟語
「周章狼狽」と反対の意味を持つ四字熟語としては、「泰然自若」が挙げられます。
「泰然自若」について
「泰然自若」は「たいぜんじじゃく」と読み、落ち着いていて、どんな物事にも動じない様子を意味します。
この言葉は「泰然」と「自若」が組み合わさった四字熟語ですが、まず「泰然」は、落ち着いていて、物事に驚かないことを意味します。一方の「自若」も、落ち着いていて、少しも慌てない様子を意味します。
つまり「泰然自若」もまた同じ意味の言葉の組み合わせであり、落ち着いていて動じない様子を強調して表します。